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読書感想文「老人と海(ヘミングウェイ)」

読書感想文「老人と海(ヘミングウェイ)」

「老人と海」の読書感想文①

作者ヘミングウェイはノーベル文学賞を受賞されているが、それはこの作品「老人と海」の功績が大きいと言われている。この物語のあらすじは、キューバに住む不漁続きの老いた漁師が、数日をかけてようやく釣った巨大なマグロを持って帰ろうとする途中に、何度も鮫に襲われて、獲物を食べられてしまいながら何とか帰還する話である。
 
この作品の魅力は、何といっても潮風が香ってきそうな「情景描写」や、魚や鮫と対峙する主人公の老人の「心情を吐露した独り言」にあると思った。それらには、自然を「敵」あるいは「征服するもの」とみなすのではなく、魚や海鳥、そしてやつけるべき鮫にすら、海に共に生きるものとして、人間対自然と言う二項対立を超えた自然観が流れている。
 
獲物の魚や退治した鮫に対しても、主人公は、ある種の敬意を払っていた。「生命への畏敬」と言う概念でノーベル平和賞受賞した、シュバイツアーに似た考え方を、ヘミングウェイも持っていたのではないかと私は感じる。
 
「幸運というのは、色々な形で現れるものだ。何が幸運かなんて、分かるものじゃない。ただ、どんな形にせよ多少は手に入れたい。代金は払おうじゃないか。灯りが映る空が見たい、と彼は思った。望みはたくさんあるが、今一番欲しいのはそれだ。」
 
この言葉は、儲けられるはずだった獲物を駄目にされて失ってしまった貧乏な主人公の心情である。星空の対価に、獲物を鮫にとられたのだと彼は言っているのである。自然は時に、人間にとって不利益な事をするものであるが、そのことを長年漁師をやっている主人公は、身に染みてわかっているのであろう。
 
この作品が書かれた1960年代のアメリカは、大量消費社会の全盛期である。大量生産、大量消費と言う人間優先の社会に対して、ヘミングウェイの発想は、「大きな恵みを施してくれたり、くれなかったりする自然の一部人間がいるという考え方」だったと思う。今でこそ「エコ」が叫ばれて久しい世の中ではあるが、当時の社会にはこのような発想はマイノリティだったのではないか。この作品は、当時の社会に対してのアンチテーゼなのだろうと思った。
 
(30代女性)

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