読書感想文「ナモナキラクエン(小路幸也)」

この作品には、最初から驚かされてばかりで、私のイメージする『楽園』とは全く違う事に気付き、わくわくしながら読んだ。小路幸也の作品には、『東京バンドワゴン』のように、大家族や信頼できる仲間がたくさん出てくる。その人達が巻き起こす些細な事件が面白くて大好きなのだが、まさか家族の謎が『楽園』のキーワードにつながるなんて思いもよらない展開に驚いた。

 

しかも、子供達4人の名前『山紫水明』にこそ亡くなってしまった父の願いが込められていて、『楽園』の意味がわかった時には涙が止まらなかった。父の残した楽園には、寄せ集めなのに穏やかで強い絆を持つ家族の居場所ができていた。父・志郎の姿が、施設出身の友人に重なる部分があり、並大抵の苦労ではなかった事に、今更ながら気付かされた。

 

 

 

その友人は、父・向井志郎とは違う形であるが、自分のお店を開業した、そこで仕事を通しての仲間を育て、自分の考える『楽園』を築いている。私は、朝美さん程ではないが、夢の途中からそこに関わっていたので、志半ばで逝ってしまった父・志郎の思いを引き継ごうとする山に感銘を受けた。

 

私には、朝美さんやハマさんのような覚悟がなく、中途半端に関わってしまっているので、最期まで見守り続けていけるのだろうかと考えさせられた。1度関わってしまったからには、きちんと最期まで見守る覚悟をしなければいけないと強く感じた。4人の子供達は、産みの母達に会うという夏休みの宿題を終えて戻ってきても、血の繋がらない4人兄妹を思い遣る周りの人達の姿が、とても素敵に見えた。それだけ父・志郎と4人の子供達は皆に愛されていたのだろう。

 

さらに、父の愛車”モーリス・マイナー・トラベラー”が、旅を終えて戻ってきた瞬間に動かなくなってしまうハプニングが発生した。ここにも最期まで子供達を見守り続けている父の想いが感じられて、涙が出た。人は1人では生きていけないというが、こんなに優しい人達に見守られている子供達が羨ましく思えた。私は、朝美さん達のように見守る立場にあるが、この温かい眼差しに励まされたり元気を与えられる様になりたいと思う。

 

最後に『楽園』のキーワードが解明し、どんな家族なのか明らかになる。人の絆やお互いを思いやる優しさ溢れる物語でほっこり心があったまる。

 

(40代女性)

 

 

 

 

ナモナキラクエン (角川文庫)
小路 幸也
KADOKAWA/角川書店 (2014-05-24)
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