読書感想文「白い犬とワルツを(テリー・ケイ)」

「きょう妻が死んだ。結婚生活57年、幸せだった。」この一文から、この主人公サムの人生とはどんなものだったろうと気になった。幸せだったって言いきれるってどんなものなのか。どんな素晴らしい人生なのかと思ったが、私の想像していたような幸せにの形とは全然違った。
 
裕福でもない平凡などこにでもいるような老人で、妻に先立たれ子供達に囲まれる生活でも無く、1人で生きて行こうとしているサム。どうして、頼ればいいじゃないか。優しい子供達なんだから。そう思わずにはいられなかった。そんなサムの前に現れる一匹の白い犬。子供達には見えず、サムの前にしか姿を現さないその犬を、サムは亡き妻なのではないかと思い始める。
 

 
 
その犬が実際に存在するものなのか、年老いたサムにしか見えない虚像なのか、物語の終盤までハッキリとはしなかった。やがてサムの体が老いに立てなくなり始めると、その白い犬はサムの子供達にも見えるようになる。実際のところ、白い犬が本当に存在したのかどうかは読み手によって意見が違うかもしれない。
 
私はこの本で感じたことは、やはり白い犬を見たい。見える人生を送りたいということだった。人生の伴侶を看取り自身も老いてなお、幸せだったと思える人生を送ってみたい。私の描く幸せというものがいかに安っぽいかということも分かった。ひとつの仕事に一身に打ち込んだサム。妻を愛し、優しい子供に恵まれたサム。そして、自身のプライドと幸せのために他者によりかかったりはしなかった。
 
他者によりかからない生活を幸せにと呼べるのは、実際に年老いてみて初めて実感できることかもしれない。サムのような人生を送らなければ、白い犬には出会えないのだ。この物語は大人のための童話として捧ぐと銘打っているが、まさにその通りだと思う。歳を重ね、ふとまた読み返したときに感じ方が変わるのではないかと思うからだ。
 
幼い頃、同じ絵本を繰り返し読んだように、この物語をまたいつか読んでみたい。その頃、私にも白い犬が見えるような歳の重ね方をしていきたいと思う。
 
(30代女性)
 
 
 

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