「太平洋戦争 最後の証言 第二部 陸軍玉砕編」の読書感想文
この「太平洋戦争最後の証言」シリーズは第一部から第三部まであり、私がもっとも壮絶で心に響いたのが第二部の陸軍玉砕編である。この本の内容は実際に戦地から帰還された元日本兵の方々の生の証言をまとめたものであるため、すごく生々しい当時の戦争の中身が伝わってくるのである。
戦争で亡くなるというのは、敵と戦って戦死するというのが一番多いかと思っていた私は、この陸軍玉砕編を読んで衝撃を受けた。戦争で敵と戦って死ぬより、飢えや病気(マラリアや赤痢など)で死ぬ兵隊が凄く多かったということである。亜熱帯のジャングルの中でのゲリラ戦や撤退などにより疲弊していく兵隊たち。
補給も断たれ、食糧も弾薬もない中で必死に生きようとする人たちの生の証言が心に刺さった。当時の報道やこれまでに読んだ戦争関連の本では知らなかった壮絶な内容がそこにはあった。極限の状態の中、草木や虫などはもちろんのこと血や小水を飲んだり、ついには仲間の肉片を口にしてまでも必至に生きようとする姿があったのである。
そうやって生還した人たちは、戦後もずっと心にストレスを抱えて生きている。あの当時に自分がしたこと、されたこと、そういう衝撃的な内容が時にフラッシュバックのように出てきていまだに苦しみから開放されることはない。私は戦後の生まれで、当時の事は本や映像などでしか知ることはない。
果たして、もしあの当時に生まれていて戦争に行かなければならないとしたら自分はここまでの行動が出来ただろうか。今の平和な日本に生まれた私には想像すら難しい。しかし、先の大戦でそういう人たちの行動、思いがあったからこそ今の日本、そして私がいるということをしっかりと考えるひとつのきっかけになったことは確かである。
当時、戦争に行き帰還した兵隊の人たちも今はかなりの高齢になり、貴重な証言を得られる機会も減ってきている。いくら数十年前の戦争といえども、風化させる訳にはいかないと考える。実際に戦争を体験した人たちがいなくなっても、あの戦争でどんなことがあったか自分なりに後世に伝えていかなければと思わせられた。
(40代男性)
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