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読書感想文「格差と貧困のないデンマーク(千葉忠夫)」

読書感想文「格差と貧困のないデンマーク(千葉忠夫)」
読書感想文「格差と貧困のないデンマーク(千葉忠夫)」

「格差と貧困のないデンマーク」の読書感想文

自律した大人とはどういう存在であるか。二十歳を過ぎてからこの国では「成人」という事になり、様々な禁止事項が解禁され、同時に義務も発生するが、私はどうしてもこの制度が納得できなかった。実年齢というだけで責任がとれる大人になったのだろうか。
 
学歴社会が崩壊して久しい現代において、本当に必要な知識と技術を確実に習得してきた20年間だったと言えるだろうか。その長年の疑問に答えてくれたのがこの本である。デンマークと日本の学校や社会の制度の違いを具体的に説明しているのだが、その一つ一つが私の疑問の答えとなり、今を生き抜く心の支えとなっている。
 
例えば「どうして学校の先生が悪い事をするのだろうか?」「どうして貧乏な人と裕福な人があるのだろうか?」「どうしてプロのくせに、お客さんの質問に答えられないで誤魔化す人があるのだろうか?」。これらは、子どもの頃、身近な大人に聞くと、嫌な顔をされたり、「生意気な事をいうんじゃない」と怒鳴られたり、適当に誤魔化された。
 
子どもだからわからないと決めつけ、適当にあしらう事でその大人たちは面倒事から解放されたが、子どもだった私からは一気に信用されなくなった。聞くだけ無駄だと思う大人に囲まれることは深く心を傷つけ、間違った感覚を植え付ける。「変な質問をすると怒鳴られるから、黙っていよう」と考えた後、次第に私は自分を卑下するようになっていった。苦しかった。
  
しかし、子どもは国の宝と考えるデンマークでは子どもたちが大人になっていく過程で「自立」できるように促すためにいろいろな取り組みがなされている。学校は楽しく、必要な事が学べる場所であるべきだということ、また、教師はいろいろな経験をしてからようやくなれる職業であること。
 
これらは、全て当たり前すぎることである。しかし、私が体験した学生生活の中でこれほどあたりまえの事を明確に示す大人はいなかった。人生は訳が分からずむやみに苦しいものであり、理不尽な我慢を強いられるものかと諦めかけた。しかし三十路を超えてから、この本を読み、長年の疑問が氷解した。
 
明確な言葉と実例によって「自立した大人」というものが、どういう過程を経てできあがっていくかよくわかった。これを日本にいるからできないと考えるのはもったいない。私は実生活に本で得た素敵な考え方を反映させるべく工夫をしてみた。
 
まず「学校は楽しく学べる環境を整えるべき」という考え方を実践してみようと決めた。ちょうど資格取得のための学習をしていたので、まずは自主学習を「楽しめるもの」と考える事ができるようになるように意識を変えた。勉強というものを「辛い修行」と考える事をやめ、問題を解くゲームだとした。
 
10点満点を取ったら、お菓子を食べていいとか、簡単なご褒美も用意した。また、学習を楽しんで実践している人の講演会を聞きに行ったり、本やブログなども読み、楽しめるコツを探した。しばらくしたら今までの暗くて辛い思い込みがなくなり、実に快適に学ぶことができるようになった。未来が明るく切り替わった瞬間だった。意識を切り替え、よい実例に学び、自分でできる範囲に落とし込んで実行することで、この本は読み物から実用書になった。
 
単に国と国との違いという単純な話ではなく、自立して自分で自分を向上させていける大人の世界と、他者に依存していかなければ生きていけないと思い込んでいる人の世界をはっきり見せてくれる本である。当然、日本にも本当の意味で自立していて、進んで自己向上をし、周囲の人を助ける素晴らしい人もあるし、デンマークにも自立できない人もある。
 
それが、国の制度や教育者の責任だと思って一生恨んで生きていくか、よいものは取り入れて自分の責任で取捨選択、試行錯誤して生きていくか。選択できるのは自分である。子どもの頃から自分の弁当を作って持っていくデンマークの子どもたちの話を読んで、私はほっとした。
 
実は、小学校の頃から自分で弁当を作らざるを得なかった家庭の事情を恥ずかしく思っていたから。一人暮らしをするようになって、料理だけは何の問題もなくできた事は、その当時の経験があったからだということを、負け惜しみではなく、本の人にも証明してもらった。
 
小さいころから、実際に自分でやってみる、自分でやらなかった事に関しては自分で責任をとることが、どれだけ実際の暮らしの中で役立つか。親が全部やってあげればいいというものではないのに、何故か、日本ではなんでも親がやってくれることをむやみに美談化する雰囲気がある。
 
本当に子どもの将来の事を考え、行動するのが本当の愛情だ。依存しあうのではなく、自立した個人としてよい関係をつくりたい。この本に書かれてある事は、国の制度を変える事として考えたら現状として難しい。しかし、個人の意識を変えるよいアイデアとして読むと、非常にゆたかな学びを得られる。本当の自立、本当にカッコいい生き方、本当に相手の将来の成長を願った行動、それらについて深く考えさせられた。
 
(30代女性)

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