「武道館」の読書感想文
「「正しい選択」なんてこの世にない。たぶん、正しかった選択、しか、ないんだよ」人は誰でも選択をしながら生きている。
そして多くの人は「正しい選択」をしようとして生きているのだろう。そのために多少無理をしたり、自分の大事なものを犠牲にしたり…そういった経験は誰にでもあると思う。この本は、そういった人生の「選択」が大きなテーマとなっている。
この本の主人公はアイドルグループの一員である。主人公たちは、ファンや世間(と思われるもの)からの制約を感じ続け、その通りにふるまうことを要求されている。
制約とは、ファンや世間からの願望や期待、常識などである。「アイドルはこうすべきだ」と思われていることである。
まだ高校生程度の主人公たちが、そういった制約にどう向き合って、どのような選択をしていくのかが描かれていく。
アイドルというと、ちょっと特殊な環境に思えるかもしれないが、一つ一つの出来事を見ていくと、多くの人たちの人生と同じような日々がちょっと誇張されているだけだ。
クラスの一員として、仕事をしていく上で、社会と関係を持っていく中で、人は一人で生きていけるわけではないのだから、自分の意見や感情だけで行動出来ないのは当然だ。
ただ、ときには誰しも、常識や環境、周囲に気を使って、または顔色を見すぎて自分の気持ちを蔑ろにした選択をしてしまうときがあるだろう。
こっちが正しいのだ、と自分に言い聞かせて。私は、それが大人になるということだと思っていた面もある。
主人公が徐々に気づかされていく(と同時に私も気づいていくのだが)、そういったことって実は流動的だし、ついさっき生まれたものでさえ、さぞ昔からあったことみたいに言われていることだ。
常識的にはこうだから、といいつつ、その常識なんてものはすぐ移り変わってしまう。なのに、いったん常識だ、定説だ、と思ってしまうと、本当は何なのかよく考えもせずそれに従って行動すべきだと思ってしまう。それが正しい選択だと盲目的に思ってしまうのだ。
そんなよくわからないものに振り回されて、本質的なものを見失ってしまうこともある。「正しいこと」に逆らう自分の感情が悪のように感じることさえある。この本で、まざまざと思い知らされる。正しいって何なのか、と。
私も、そろそろ人生の半ばに差し掛かってきたので、たまには自分の人生を振り返る時もある。あのときの選択は、本当に正しかったと言えるのだろうか。そして改めて考えてしまう。
今、自分がしようとしている選択は、後から後悔しないものなのだろうか。今ならば全く受け入れられない、当時の常識に振り回されてした選択が今の自分につながっているのだろうか。そうしたことが、自分にとって大切なことだったのだろうか。
もちろん周囲に迷惑をかけてはいけないとは思うが、「これが正しいのだ」と思うより、後から「あれで正しかった」と思える選択をして生きていきたいと思った。
(40代女性)
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