読書感想文「ウォールフラワー(スティーブン・チョボスキー)」

人は、笑顔の裏にも悲しい過去や言い出せない秘密を抱えている。それを周囲にさらけ出せない時に孤独を感じ、自分ではどうにも出来ないような暗闇に迷い込んでしまう。この作品はそんな陰を誰もが抱えているということに目を向けながらも、それと同時に誰もが一人ではないのだということを強く感じさせてくれる作品であった。

 

世間には実に多くの人々が存在するが、誰一人として同じ人物が存在しないことは言わずもがなである。しかし、その中には数学の部分集合のように一部似ている人物は存在し、これをある一点の視点から大別した際に、多数派と少数派という分類が必然的に生まれてくる。この少数派にカテゴライズされた時、どこか不安を感じる人は少なからずおり、実際私自身もその一人であった。

 

 

 

他人と少し違うことに対する恐怖はないのだが、それをさらけ出すことが中々出来ずに孤独を感じるようになったのだ。そんな私にとってこの作品との出会いは、孤独の暗闇に今まで感じたことの無い温かさを帯びた一筋の光を射してくれる、衝撃的なものだった。

 

この作品は“はみ出し者”という少数派にカテゴライズされている少年少女たちの青春を描いている。物語は主人公であるチャーリーの日記風に書かれているのだが、日記は宛も親友に心の内を告げるような文体で書かれており、私にはこれはチャーリーが物語の冒頭では現実世界にありのままの自分の姿を見せられる友人がいないが故に書かれた日記に思えたのだ。

 

私はここから感じたチャーリーの孤独と、私自身が感じている孤独をいつの間にか重ね合わせ、行間に垣間見られる彼の心をごく身近に感じることが出来た。内向的で周囲の空気に上手く馴染めない少年チャーリーは、自身が入学した高校で今まで感じたこともないような深い友情や愛の温かさに触れていく。

 

そして読者である私自身も、チャーリーという登場人物を通して新たな友人に出会っているような錯覚に陥った。チャーリーが出会うのは、明るく前向きだがゲイであることを隠しているパトリック、その妹で優しく魅力的なサムなど非常に個性的な人物たちだ。

 

彼らとの出来事がチャーリーの日記に綴られていくにつれ、彼の孤独が少しずつ癒やされていく様、彼が自分の居場所を見つけていく様は、読者としても読んでいて思わず嬉しくなった。そして私自身もそんな素敵な登場人物たちとの出会いを愛おしく感じることが出来たのだ。

 

彼らの高校生活はパーティーや舞台制作、そして夜のドライブなど幸せで楽しい思い出で溢れている。しかし、それだけではなく様々な壁にも直面する。恋愛関係の拗れ、セクシャルマイノリティーに対する偏見、そして最後に明かされるチャーリーが抱えてきた秘密。全てが複雑に絡まり合って一筋縄ではいかないものばかりで、時には友情に亀裂が生じてしまう。

 

だが、そんな幾多の壁を乗り越えることで更に深まっていく彼らの絆には強く胸を打たれた。私は、今までどんな対人関係であっても、そこに亀裂が入ることを恐れて中々踏み出すことの出来ない一歩があった。自分のせいで相手を傷付けてしまったらと思うと、どうしても動くことが出来なかったのだ。

 

しかし今考えると、もしかするとそれは単に自分自身が傷付くことを恐れていただけなのではないかと思っている。この物語の人物たちは、例え自分が傷付くような結果であったとしても、その根底には必ず愛があるように感じた。常に自分を偽ることなく真っ正面から全力で相手に向かっているからこそ、反発するときもあれば、更に絆が深まっていくこともあるのだ。

 

その様子は、私の背中を優しくも確かに押してくれた。例え恐怖で足が竦んでいたとしても、ありのままの自分の姿で飛び込めばきっと誰かが見つけてくれる、そう思えるようになったのだ。人には、それぞれ自分の居場所が存在する。無条件で本当の自分を受け入れてくれる居場所が。

 

例え今はその場所を見つけることが出来なかったとしても、必ずどこかにある。それは家かもしれないし、この小説の登場人物たちのように友人の隣かもしれない。実際、私自身も明確な居場所は未だに見つかっていない。でも、もし誰かが私を居場所の一つとしてくれているのならば、私はその人の全てを受け止める居場所になりたい。そここそが私自身の居場所でもあるのだから。

 

“自分は、他の人とは違う”。そんな当たり前のことを再認識させられる。それは決してマイナスな意味では無く、むしろ真逆の意味で。孤独を感じた心を温かく包んでくれる、言わばブランケットのような作品に感じた。

 

私自身もこの作品との出会いが切っ掛けで、今までとは違った世界の見方を出来るようになった。もし、大なり小なり孤独を抱えている人がいるのならば、是非読んでもらいたい作品である。きっと“自分を生きる”という言葉の意味を再認識出来るだろう。

 

(10代女性)

 

 

 

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