読書感想文「花が咲く頃いた君と(豊島ミホ)」

この本を一冊読み終わって、すごく名残りおしいような、まだおわらせたくない、この世界にとどまっていたい、という気持ちになり、しばらくは余韻に浸って一人ぼーっとしていた。一冊の中に押し込められたいくつかのストーリー。そのどれもがおもしろくて、続きが知りたくなってどんどんと読み進めていったら、あっという間に読み終えてしまった。

 

どれもバラエティーに富んでいて異なるジャンルの話だったれど、どれも切なかった。まるで自分のことのような今まで生きてきた中で経験してきたこと、その時の様々な思い、困っていた気持ち、悲しかったこと、感じたことなど、忘れかけていたのに眠っていたたくさんの記憶がだんだんと呼び覚まされていった。

 

私はたぶん、他の女の子たちと比べて多少生きていくのが難しい種類の女の子だったと思うし、それは今も変わらないかもしれない。気難しくて真面目で融通がきかなくて、でもわがままで誰より愛されたいと願っているようなどうしようもない子だった。

 

だから例えば最初のストーリーのように、女の子同士の友達関係や男の子との関わりではいろいろと悩んだり困ったりすることがあった。なかなか人には話しづらいデリケートな部分なので、誰かに相談したり疑問をぶつけつたりすることもしたことがないまま大人になってしまった。

 

 

 

また2番目のストーリーでは、自分と似ていないものの親からの言葉や行動で傷ついたときのこと、社会における自分の立ち位置や役割、居場所についてふと思うことや、自分を必要としてくれる人に出会った時の気持ちや行動など思いは感じることは私と同じなんだと妙にほっとした。

 

そして次のストーリーには大きく共感をした。というより最近の私の課題にぴたりと当てはまるような心情が描かれていた。自分を含め、家族や大切な人が病気になること、死んでしまうというのはどういうことなのか。ちょうど最近そういったことに何度もぶち当たり戸惑うことが多かった。

 

この話を読んで、何かが大きく変わったということはない。ただ、共感する場面がいくつかある中で私の思いが少しずつ整理されたような気がするし、読み終わった後、妙にいろいろなことがしっくりきて、もう大丈夫、と思った。そしてやはり、大切な人には生きていてほしい、生きてそばにいてほしい、そして私もまだまだ元気で生きていかなくてはいけない、と強く思った。

 

私も最近、生死をさまよう手術をしたばかりだった。家族はとても心配し、より大切にしてくれるようになったが、私も彼らをより大切に思うようになった。死は、避けられないことだけど直面したくない。大切な人がいなくなるのは淋しい、辛い。

 

そして最後のストーリー。私も桜が大好きである。桜が咲く時期には、一人で桜を見上げて幸せな気持ちになれる。人間関係は難しくて、うまくいっているときはいいけど、うまく言葉で伝えたれなかったり、相手を信じることができなかったりすると途端に崩れてしまう。

 

そんなときは絶望的な気持ちになる。突然奈落の底に叩き落されるようなこともある。それでも、人は優しくて、いっしょにいると幸せな気持ちにさせてくれる。一人で桜を見るのも好きだけど、やっぱりいっしょに見てきれいだねと言える人がいる方がいい。いろいろな気持ちがごちゃまぜになったけれど、どれも大事な私の気持ちだなと思った。

 

(30代女性)

 

 

 

 

花が咲く頃いた君と (双葉文庫)
豊島 ミホ
双葉社 (2013-04-11)
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