読書感想文「箱入り息子の恋(市井昌秀、今野早苗)」

市役所に勤める35歳の独身である雨雫健太郎とお嬢さんである25歳の今井奈穂子の恋の物語だ。健太郎は両親と実家に暮らしていて、昼食に時間になると家に戻って食べるほど家を気に入っている。両親は健太郎に結婚をすすめるが、女性との付き合った経験のない健太郎にはその気がない。このあたりは同じく35歳まで独身をしてやっと結婚できた自分と重ね合わせることができ共感をもった。

 

両親は代理お見合いというのに参加するが、親同士で子供の結婚相手をさがすことは初めて聞いたので興味がひかれた。自分は結婚相談所に登録して結婚相手を見つけたので、親がそこまでする必要があるのか疑問に思ったが、将来的には流行るかもとおもった。

 

 

 

健太郎の両親と奈穂子さんの両親は代理お見合いするが、奈穂子さんの両親は健太郎は市役所に勤務していることが気に食わないので、話がかみ合わずに終わってしまう。現在は市役所勤務という安定した職業として人気があるが、そう思わない家庭もあるのかと思いこの点はあまり共感できなかった。

 

健太郎が雨の日に、道端にたたずむ女性をみつける。ずっとこっちをみているので見過ごすことができなかったので、自分が差していた傘を渡してしまう。女性は驚きますが、健太郎はすぐに立ち去ってしまう。この場面は健太郎のやさしさと女性の行動に少し疑問が残った場面であった。

 

その後その女性が奈穂子さんであることがわかり、健太郎はお見合いすることになる。お互いの両親と子供がお見合いの場面で登場したときに、奈穂子さんが実は眼が見えないことが判明したときには驚いた。ここで雨の日の奈穂子さんの行動がわかった。健太郎の母親が遺伝性ではないかを聞いたときには、親として当然なことですが、相手には傷つく言葉だと思う。

 

今井家の父親が娘が眼がみえないのに、健常者である健太郎には荷が重いという場面では親にとってはあたりまえのことだが、健太郎が奈穂子さんに対して直接どう思っているかを聞き出す場面がある。奈穂子さんが気の合う人と一緒にいられることが大事で障害についてはその次だということを話したときに、自分自身も障害者に対する考え方をあらためることになった場面である。

 

奈穂子さんは母親の応援と父親の反対を抱えながら、健太郎とのデートを楽しむ。途中で健太郎自身をもっと知りたいためにホテルに行く場面もあるが、いやらしくなく、恋する男女の普通の感情なので自然に受け止められた。父親にデートしているところを見られ殴られるが、奈穂子さんが事故に巻き込まれるのを防ぐ結果大けがをする。

 

入院先で奈穂子さんと両親が見舞いに訪れますが、健太郎の母親が帰ってくれといい、なかなか帰らないときに「耳も悪くなったのか」ということを言う場面では考えさせられた。大事な1人息子を大怪我させたことはわかるがそれは言ってはいけない言葉だ。

 

奈穂子さんが自分のために怪我をさせたことで距離を置こうとしますが、最初のデートで食事した牛丼屋に1人ででかけて牛丼を食べながら号泣する場面では読んでいて涙がでてきた。さらに後から追いかけて離れたところにいる健太郎も泣いていたのでさらにもらい泣きした。健太郎が奈穂子さんの本当の気持ちを知り、今井家の2階の奈穂子さんの部屋に忍び込み、抱き合うところは本当によかった。

 

この物語は眼の不自由な女性と毎日規則正しく生活する35歳の男性の話ですが、お互いの生活と両親の反対にもかかわらず純粋に好きになっていく過程がよく伝わってくる。眼が不自由でも心が豊かなので魅力的な女性であることが、もてない男性の心に響き、それぞれ共鳴しあって助け合いながら生きていくすばらしさが感じ取れる。

 

両親が子供には幸せになってほしいという気持ちはわかるが、好きになる気持ちは本人同士でないとわからないので見守っていくことも大事なことと教えられた。

 

(50代男性)

 

 

 

 

([い]5-1)箱入り息子の恋 (ポプラ文庫 日本文学)
市井昌秀 今野早苗
ポプラ社 (2013-03-05)
売り上げランキング: 202,036

 

 

ブログをメールで購読

メールアドレスを記入して購読すれば、更新をメールで受信できます。

 

今野早苗作品の読書感想文はこちら

コメントを残す

シェアする