「たけくらべ」の読書感想文①
「たけくらべ」は主人公の美登里と信如の初恋を描いた作品で、大人でもなく子供でもない二人が同じ学校で出会い、恋をしてお互いが全く別な道をすすんでいくという話であるが、ぜひ思春期に読みたかったと思った。
私はこの「たけくらべ」を学生の時に読む機会がなく社会に出て今回初めて読んだ。まず第一の感想としては樋口一葉の文章の綺麗さと何よりも無駄がない短い文章の中にある、わかりやすい美しさが何よりも特徴的だと思った。そして、身に染みて感じたのは本を読むのが好きな私だが、どうしてもわからない表現があり、もっと勉強をしておけばよかったなと思った。
今回は辞書を片手に調べながら読むと言うことをして、学生気分に戻ったような読書の時間であった。どんどんと読書離れが問題視されていくなかで、こうやって100年近く前の作品を読むと言うのはとても幸せなことだと思った。
人間関係や進路、身体的にも悩んでいた思春期にこの作品を読んだらどんな感想を覚えるのだろうか。しかし、大人になった今思うのは、やはりピュアな子供の美しい恋心と社会を知らない子供ながらの残酷さと不器用さを懐かしくなりながら読むことが出来た。もちろん遊郭や僧という世界とはまったく違う現代の社会だが、その中でもやはり今に通じることも沢山あり、子供たちの社会や無邪気さは今も昔も変わらないのだろうと思った。
私は樋口一葉の人生にも興味があり、24歳という若さでなくなった彼女の傑作とも言える「たけくらべ」だが、彼女は決して恵まれた生活を送った少女時代ではなかった。きっとこの美登里の裕福な生活の傾斜は彼女のあこがれなのではないだろうか。そう考えて読むとよりこの美登里というキャラクターが愛らしく感じてきてしまう。
それにしても、女性らしい樋口一葉の恋愛小説は時代を超えても愛され続けるのはよくわかる。最後のシーンで信如が水仙を美登里の家に置いていくところなどはきっと男性では思いつかない女性らしい考え方だと私は感じた。そして、その水仙を置いていく行動そのものが信如の美登里への愛情表現と別れであり、彼と美登里の人生の分かれ道なのである。こんな美しすぎるラストシーンは時代は違っても同じ女性として共感できる。
恋愛というものも時代を超えても変わらないものだからこそ、これから先何年たってもこの「たけくらべ」は愛され続けるだろうと私は読みながら体感した。しかし、私もそうだが、この美しい一葉の作品などが理解できない若者や読者が増えることはとても悲しいことだと思う。私は改めて今回この「たけくらべ」を読み日本語の美しさや深さ、そして難しさを感じることができ、作品に共感したと同時に良い読書の機会を得たと思う。
(30代女性)
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