「舞姫」の読書感想文①
この作品を読んで思ったことは、主人公の豊太郎は少し自己中心的な人物だなと第一に思った。最後は二人が離れ離れに生きながらも遠くで気持ちだけは繋がっていればいいなと読者としては思った。おそらく多くの読者がそう思うのではないか。
でも、ヒロインの舞姫であるエリスは気が狂ってしまい、豊太郎は日本に帰っていってしまうということが衝撃的であり、現実的な結末に驚きました。
私も留学経験があるために、海外で暮らす大変さはよくわかる。そのため、この鴎外が描いた当時の留学や海外在住がどれだけ大変だったかは今以上だと思う。今と違い、大陸を渡ることも一苦労で情報を手に入れたり連絡を取ることも今では考えられないほど苦労しただろう。
そう考えると、今まで決して失敗もなく、順風満々に育った豊太郎にとってはとても心細く大変だったものだと思う。そのため、エリスとの出会いは本当に彼の癒しの時間であり、かけがいのない存在だったと思う。
作品の中ではエリスの感情は描かれていないために彼女がどのような人間であったのかというのはわからない。だからこそ、鴎外の綺麗な文章によってエリスがとても美しい少女として描かれ、さらに読者の想像によりさらに育てられていくというのが私が好きな部分である。
決して豊かではない彼女の生活が、ダンサーとして劇場で美しく立ち金髪の華奢な少女を私も想像しながら読ませてもらった。そのため、豊太郎にとってのマドンナ像をしっかり想像できとても楽しく読むことができた。
また、美人がつつましく豊太郎と生活をしながら文字を覚えたりしている部分がなんだか夢があり、二人の関係をほほえましく受け入れられた部分である。だけど、最後の豊太郎のエリスへの仕打ちはどうしても許せない。
気が狂ってしまった彼女を置いて、親友の相沢に助けてもらい日本に帰ってしまうという結末は女としては決して許せない仕打ちである。彼女はダンサーとして舞台に立つことができないだろうし、豊かな生活ができないだろう。
何より二人で働いたからこそなんとか生活ができたのにも関わらず、気が狂ってしまったことも相沢のせいにするところがなんとも自己中心的で社会に出ている男性とは思えない対応である。
しかし、異国の土地で成功を夢見て出かけた男がタイミングを逃し、細々と生活をすることになったことを考えると、親友の助けで日本に帰ると言う決断はとても現実的かもしれない。
ただ、豊太郎はエリスが身ごもっていることを知っていたのだからこそ、せめて結婚をして彼女を日本に連れて帰って欲しかった。
最終的には彼女が困らないように援助をするという結末で終わっているがお金だけでは子供は育たないだろう。ただ、もしかしたら、相沢も豊太郎とエリスのことを考えてエリスにお金を渡し、豊太郎を日本に帰したのかもしれない。
恋愛というのは周りが見えなくなる。豊太郎が思っているよりも周りからみたら無茶な生活や無謀な判断だったのかもしれない。それを親友である相沢がサポートをしたのかもしれない。そう考えればすべては納得できる。
この本を読んで私は豊太郎に共感することは出来なかったが、ドイツで豊太郎はきっと人生の中で一番濃い時間を過ごせたのではないかと考えている。そして、改めて異国に行きたいと思うきっかけをもらった。
(30代女性)
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