読書感想文「舞姫(森鴎外)」

この作品を読んで思ったことは、主人公の豊太郎は少し自己中心的な人物だなと第一に思った。最後は二人が離れ離れに生きながらも遠くで気持ちだけは繋がっていればいいなと読者としては思った。おそらく多くの読者がそう思うのではないか。

 

でも、ヒロインの舞姫であるエリスは気が狂ってしまい、豊太郎は日本に帰っていってしまうということが衝撃的であり、現実的な結末に驚きました。私も留学経験があるために、海外で暮らす大変さはよくわかる。そのため、この鴎外が描いた当時の留学や海外在住がどれだけ大変だったかは今以上だと思う。

 

今と違い、大陸を渡ることも一苦労で情報を手に入れたり連絡を取ることも今では考えられないほど苦労しただろう。そう考えると、今まで決して失敗もなく、順風満々に育った豊太郎にとってはとても心細く大変だったものだと思う。

 

そのため、エリスとの出会いは本当に彼の癒しの時間であり、かけがいのない存在だったと思う。作品の中ではエリスの感情は描かれていないために彼女がどのような人間であったのかというのはわからない。

 

だからこそ、鴎外の綺麗な文章によってエリスがとても美しい少女として描かれ、さらに読者の想像によりさらに育てられていくというのが私が好きな部分である。決して豊かではない彼女の生活が、ダンサーとして劇場で美しく立ち金髪の華奢な少女を私も想像しながら読ませてもらった。

 

そのため、豊太郎にとってのマドンナ像をしっかり想像できとても楽しく読むことができた。また、美人がつつましく豊太郎と生活をしながら文字を覚えたりしている部分がなんだか夢があり、二人の関係をほほえましく受け入れられた部分である。

 

だけど、最後の豊太郎のエリスへの仕打ちはどうしても許せない。気が狂ってしまった彼女を置いて、親友の相沢に助けてもらい日本に帰ってしまうという結末は女としては決して許せない仕打ちである。彼女はダンサーとして舞台に立つことができないだろうし、豊かな生活ができないだろう。

 

何より二人で働いたからこそなんとか生活ができたのにも関わらず、気が狂ってしまったことも相沢のせいにするところがなんとも自己中心的で社会に出ている男性とは思えない対応である。

 

しかし、異国の土地で成功を夢見て出かけた男がタイミングを逃し、細々と生活をすることになったことを考えると、親友の助けで日本に帰ると言う決断はとても現実的かもしれない。ただ、豊太郎はエリスが身ごもっていることを知っていたのだからこそ、せめて結婚をして彼女を日本に連れて帰って欲しかった。

 

最終的には彼女が困らないように援助をするという結末で終わっているがお金だけでは子供は育たないだろう。ただ、もしかしたら、相沢も豊太郎とエリスのことを考えてエリスにお金を渡し、豊太郎を日本に帰したのかもしれない。

 

恋愛というのは周りが見えなくなる。豊太郎が思っているよりも周りからみたら無茶な生活や無謀な判断だったのかもしれない。それを親友である相沢がサポートをしたのかもしれない。そう考えればすべては納得できる。

 

この本を読んで私は豊太郎に共感することは出来なかったが、ドイツで豊太郎はきっと人生の中で一番濃い時間を過ごせたのではないかと考えている。そして、改めて異国に行きたいと思うきっかけをもらった。

 

(30代女性)

 

 

 

教科書などにものっていて、有名な森鴎外の作品だが、最近まで読んだことがなく改めて読んでみた。主人公の豊太郎は、エリスと出会う前まではいわゆるエリートであり、まだ世の中の辛酸を舐めたこともない、失敗の苦さも味わったことのない、青年である。

 

この舞姫、青春の苦みを豊太郎が回顧するという形式をとっているのだが、私は豊太郎に同情はできなかったのである。豊太郎はいわゆる天才であり、19で大学卒業して官職につくのだが、働きが優秀なためにドイツに留学を命ぜられる。豊太郎はそこで、仕事をしたり学ぶうちに自分の本来の性質に気づいてしまう。

 

本当の自分は、このような機械人間ではなく、もろい部分のある人間であるということに。今まで自分が失敗しなかったのは、ひとえに失敗をすることが恐ろしかったから、他人の期待を裏切ることが怖かったから、であるということに。自分の在り方への疑問を持つ豊太郎、そこへ、かわいそうな女性エリスに出会いひとめぼれをしてしまう。

 

このエリスと豊太郎のなれそめの描写は、とても清々しく初々しさにあふれている。しかし、現実はいつも人間を試していく。踊り子と交際していることが上司にばれ、自分の思うような機械人間となりえなかった豊太郎を上司は免官する。そこで、豊太郎はドイツに残り働いてエリスと暮らすことを選ぶのである。

 

私は、このようなエリートがこういう生活に果たして耐えられて、今までの全てをなげうってさえ愛に生きることができるのか不安に思った。エリスとの生活は実に幸せそうではあったが、豊太郎は結局、相沢の誘いに乗り大臣と一緒についていくことを選ぶ。しかし、その選択にすぐ後で後悔し失神までしてしまう。

 

やはり豊太郎は、そのような激しい人生の荒波を乗りこなすことはできないだろう、と予想していた。その通りだった。なぜ、豊太郎は後から決断を翻すのであれば、最初大臣に免官される前にエリスを振り切って日本へ帰らなかったのか。エリスを選ぶなら、全てを捨てなければいけないことは分かっていることなのに、あとからエリスが泣くこともわかっていながら、相沢と無責任な約束をする。

 

豊太郎は流されている。自分の決断に対して、とても意志薄弱だ。それによって、周囲の人を傷つけている。だから最初に行ったように、私は豊太郎に同情はできないと思った。舞姫は人間の弱さ醜さをまざまざと見せつけることで、読後に深く考えさせられる。これは、人間にありうる弱さだと私たちはどこかで了承している。

 

だからこそ、豊太郎に怒りを感じるとともに悲しみを感じる。優柔不断さ、意志薄弱さ、それはとりもなおさず私たち皆にそなわるもので、それが他人を傷つけていくことの世の中の悲しみを、私たちは知っているのである。

 

(30代女性)

 

 

 

ブログをメールで購読

メールアドレスを記入して購読すれば、更新をメールで受信できます。

 

 

 

コメントを残す

シェアする