「檸檬」の読書感想文①
この作品を読むと肩の力が抜ける。どうしても社会の中で生きていくと、自分の評価を気にしたり他人と違うことを恐れたりしてしまいがちになる。もちろん私もその一人である。失敗を恐れて、でもどこかで人から評価されたいという気持ちがある。
しかし、人の良さは時に評価をされないし、もしかしたら時代が違ったり場所が違うだけで評価が変わるかもしれない。この本を読むと正解を踏まなくてもよいんだということを感じることができて嬉しく思う。
主人公である「私」が街で見つけた檸檬に感銘を受け、今まで感じていた景色が一瞬にして変わるというのは私にも似た経験がある。
まさかこんなことを書く作家がいることに何よりも感銘を受けた。私はこの作品の最後の部分の「私」がお店に檸檬を飾って帰る部分が好きなのであるが、人によってものさしが違うのだということがここまで面白いことなのかと、この本を読むまで考えることが出来なかった。
でも、この作品を読んで自分のしたことやたわいもないもので、誰かが救われたり救ったりしたらいいなと思った。檸檬という本当にどこにでも手に入るもので「私」の世界が変わったように、私も自分の生活の中から新しい感情や感覚を発見してみたいと思う。
もしかしたら、まだ知らない感情などに会えるかもしれないと思いわくわくしながら読んだ。また、この作品のあっさりとした感覚と特別に明るくない展開が私はとても好きだ。
このはっきりとした感情が描かれたメッセージ性も好きだ。ストーリーがあると感情移入もしやすくて、泣いたり怒ったり出来て楽しい。
それこそ決して高級な敷居の高いものではなく日常にある風景が描かれていて誰もが感じたことのある感覚を描写しているのが魅力的なのである。そのため、余計に檸檬という単語が出てくるだけで檸檬のすっぱい味覚や鮮やかな色、さわやかな匂いまでも感じられる作品だと思った。
まるでフランス映画のような写真を切り抜いたような作品だと思う。「檸檬」は日本の文学界では名作中の名作と言われていて外国語でも訳されて発表されているが、本当に名作だと読んで改めて思った。
素敵な言葉では表現できないが、人間の日常をここまでもさらさらと表現している作品はないと思う。日常が見えるからこそ多くの人に評価をされているのだと私は思う。私自身がこの作品を読むことで日常が楽に考えられるから好きな作品なんだと思う。
(30代女性)
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