読書感想文「サイコメトリック・キラー(ダイナ・グラシウナス)」

「どこもかしこも声だらけだ」2週間の昏睡状態からようやく回復したデイヴィッド・ヴァンデマークはそう言い放ち、まともに会話ができるようになるまでは2日も要した。不運にも瀕死のエレベータ事故が彼を襲った後に聞かされたのは、彼の妻と子供が凶悪な殺人犯によって殺害されたという話だからなんともやるせない。

 

それでもデイヴィッドは、涙も見せず怒りさえもなかった。なんという精神の強い人間なんだろう。いや、自分自身も2週間も昏睡状態になるような事故を経験して、さらに愛する妻と子供を殺害されたのだから、もうきっと放心状態になってしまったのかもしれない。私はそう思った。デイヴィッドはまるで全てを知っていたかのように当然にふるまったのである。

 

デイヴィッドは事故の後、他人の思考を読むテレパシー、物から残留思念を察知するサイコメトリックの能力を得たのであった。彼は人から聞かなくても全ての出来事を把握できる能力を手にしたのである。私は幼いころに自分だけ何か特別な能力があったら良いなあと思うこともあった。スポーツで1位になれたり、お金持ちになれたり、特別な能力は自分や周りを幸せにできると思っていたからである。

 

 

 

でも、デイヴィッドは不幸にもそのサイコメトラーの能力によって妻と子供が殺されたことを知ってしまったのである。そしてその力で、妻と子供を殺した犯人を突き止め復讐をした。それ以来はサイコメメトリックの力を使って悪を浄化する自称正義のヒーローなのである。

 

デイヴィッドが凶悪殺人犯をばったばったと倒していく様は見ていて気持ちがいい。そしてサイコメトリックの力によって暴かれる惨殺事件の背後に存在するFBIや連邦政府の裏にうごめく組織の存在と、たった一人でデイヴィッドを追い続けてきたFBI刑事のアイラとの和解タッグ。最後には悪が敗れ街は浄化される。

 

いかにもアメリカ的な正義感が感じられる型にはまった都合のよいストーリー展開ではあるが、デイヴィッドをはじめとしたここに登場する人物達の正義感には心を打たれるものがある。それは歪んだ正義感かもしれない。自分や周りの人を不幸にしてしまうかもしれない。それでも正義は清く正しいのだと思わせられるのである。

 

(20代男性)

 

 

 

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