読書感想文「ヨーロッパぶらりぶらり(山下清)」

私はこの本を近所の本屋さんでまさに「ぶらりぶらり」していたところでたまたま見つけた。その時は何が書いてあるのかあまり期待もせずに買ったのだが、とにかく笑った。こんなに笑った本は久しぶりだと思う。でも笑うというのはそこになんらかの共感があるからだ。そう、私と清との共通点をいくつも発見した。

 

まず、絵を描くこと。子供の頃は誰でも絵を描くが、これを大人になってもずーっと続けている。続いているというのは意外に難しく珍しいことなのだ。私も何度も「もう止めてしまおうか」と思ったが、ちょっとした景色を見ると「ここは絵になるぞ~」と思い、頭の中で紙に描きだしてしまう。

 

そして、私もヨーロッパで絵を描いたことがある。これは結構大変なのだ。式場隆三郎先生がいなかったら多分、清1人では無理か迷子になってしまうと思う。何が大変かというと、まずトイレなのだ。どこへいってもトイレがある日本から行くと海外は本当にトイレの苦労が多い。「トイレは」どこですか?」という言葉を一番よく使った気がする。フランスでトイレに行くシーンがあるが、私はここで大笑いした。

 

 

 

トルコ便所という変わったトイレで清も一苦労する。私も水で濡らしはしなかったものの、ドアを開けた瞬間、使い方が分からなかった。かと言って外国でそんなことをいちいち人に聞くわけにもいかない。でも、清は大真面目にきちんと対処していて感心した。

 

それから、細かいことがひとつひとつ気になってそこで頭が前に進まなくなるところもよく似ている。清はロンドンで、ロンドンをドンドンと言うようになってきて、自分で「頭がおかしくなった」と本気で悩む。外国でアルファベットの看板ばかり見ていると、私もすごく不安に感じたものだ。そしてそういう小さなことがきっかけで眠れなくなる。特に目に入ったものを記憶する能力の高い清には、頭を切り替えることが相当大変なことなのも分かる。

 

そして、一風変わったことを考える。エジプトでピラミッドにいくシーンがあるのだが、清にはあの大きさがどうも腑に落ちない。「山のよう」「こんな墓に入れるのはゴジラかキングコング」だと言う。私も正直なところ、巨大なピラミッドを見ると、どれだけの人が働かされたのか景色が浮かんで心穏やかではないのだ。清に言われて、「やっぱりそうだよね」と思った。権力を感じるものはあまりありがたく拝見する気になれない清だった。

 

清は私が心の奥の奥のそのまた奥のほうでフツフツと感じながらも、思わないように言わないようにしてにしている部分のふたを次々開けてくれる。だから心が軽くなる。だから笑ってしまうのだ。日頃の生活には言ってはいけないことがあるのは仕方ないとしても、感じても感じないふりをしていなければならないこともたくさんあるのだ。それに気付かされる、読んでいてそんなふうに思った。

 

(40代女性)

 

 

 

 

 

日本ぶらりぶらり (ちくま文庫)
山下 清
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