「薩摩スチューデント、西へ」の読書感想文
生麦事件をきっかけに起こった薩英戦争で深手を負った薩摩藩が、戦争相手であるイギリスに対してその強大な海軍力と工業力を敵から学ぼうとするために幕府には秘密で巨額の費用をかけて15名の留学生を送り込んだ。当時は外国に行くことは許されておらず、死罪にあたる国禁であったことから留学生たちは欧州列強に立ち向かう新たな国造りという重大な責務を背負ってイギリスに向かったことになる。
留学生たちはイギリスへの途上において、香港、シンガポール、インドと渡り、イギリスのその先進の文化と文明を目の当たりにする。ちょんまげを落とし武士の魂ともいえる刀を預け、英語を学び、洋服を着て肉を食らう。最新のガス燈や水洗便器、蒸気機関など、彼らにとっては異端な異国文化と見たこともないようなテクノロジーが満載であった。
しかし、留学生達はそうした文化や技術をしっかりと吸収して学び祖国に持ち帰ろうと努力したことが、戦争相手であるイギリス人の目にもとまっている。井の中の蛙であることの恐ろしさ、開国し交易して富を得て強固な国家をつくること、多くの投資家からお金を集めて一大事業を成し遂げる今でいう株式制度の力を知った。
そしてそうした思いが、攘夷という考えから次第に日本国も開国をして、たくさんの国々と交易をすることによって富を得なければならないことに気付く。一同の気持ちの変化と気づき、当時のイギリス文明と維新前夜の日本の激動のあゆみ、この本を読むにつれて彼らの気持ちに同化してワクワクする思いを持った。
昨今グローバル化と唱えられて久しい。日常のありとあらゆる商品はたくさんの国から国へ移動している。それと同時にヒト・カネも移動している。このことが私たちの生活をどれほど豊かにしてくれているかと思うとグローバルの最前線で活動している企業や人には頭が上がらない。
維新前夜の1865年、当時世界で最先進国であったイギリスで学んだ彼らの姿と今同年代である自分と比較すると、その不甲斐なさに恥ずかしい思いをしつつ、彼らのように学び自らの行動を見直す気概となったことは間違いない。20代のうちにこの本に出会えて良かった。そう思える一冊である。
(20代男性)
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