読書感想文「こちらあみ子(今村夏子)」

 
人の生き方やその世界は本当に様々だ。この本を読んで強く感じた事である。私達の多くは、『普通◯◯だ』という価値基準の中で生きており、そこから正解・不正解な生き方を決めてしまっている気がする。斯く言う私こそがその1人である。
 
自分の中の常識枠から抜け出る事に怯え、突出しない無難な生き方を選んできた私にとって、主人公あみ子は何処か恐ろしく、でも羨ましいそんな存在だ。思いおこせば、学年に1人は居たなと思い出すような、そんな子ども。自分とは違う感覚、違う空間で生きているあみ子に、怖くないの?と聞いてみたい。

 
 
勿論怖いなどという筈もない。それは私の感覚であり、逆にあみ子からみれば、私などは、何で思ってることちゃんと言わないの?楽しくないの?悲しくないの?そう問われるような気さえする。1人ひとり、捉える感覚や見え方は違うのだという事。幸せとは何なのか?という事をあらためて問われた気がした。
 
取り巻く家庭状況についても、個々それぞれでありながら、実は内包しているものや、表出の仕方は、ある程度パターン化された、何処の家庭にも起こりうる、決して他人事ではない世界であるという事も本書を通じて感じた事の一つだ。
 
一見、【普通】に見えるあみ子の家庭も、腫れ物に触るような、何処か線引きされた箱の中を飛び越えられずに行ったり来たりしているような、不安定で危うい感覚を孕んでいるが、自分の家庭も実は似たようなものであるし、友人知人の、羨ましく穏やかに見える家庭にも、やはりそういった何かしらが潜んでいるのは常日頃感じていた事であり、本書でまた確信を得た気すらしたものだ。
 
特別にみえるあみ子が、実はそれ程特別ではない事。少数派には、少数派の世界や生き方があり、幸せがある事は、何だか自分を勇気付ける。それは、上や下を見て自分の立ち位置を確認する旨の安心感などではなく、私自身も自分の思うままに、泣いても、理解が及ばない事があっても、自分らしく生きていいのだというメッセージを本書から受け取ったからである。
 
(30代女性)
 
 
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