私が中学生のころ、学校の図書室で大流行した本がある。「ダレン・シャン」という本で、海外の翻訳ものである。私は翻訳ものはあまりなじめなかったが、このシリーズだけはのめり込むようにして読んだものだ。当時の私は、部活の部長としてマネジメント、生徒会の役員としての細かい雑用、など中学生ながら給食の時間も削るようにして忙殺されていた。
そんな私の唯一の心のオアシス、それが図書室だった。憧れの美人図書室司書さんに、大好きな本がいっぱい。夢のような空間だった。昼休みに目の回るような忙しさで生徒会の役員会を終え、部活の段取りをつけ、残る時間は5~10分。たったそれだけの時間だけれど、図書館で人気の本を貸出手続きをして、午後の授業までに急いでクラスに戻る。
それを一年間続けた。家に帰ってからは勉強漬けだったので、私はトイレ休憩や先生がクラスにくるまでの細切れの時間を利用して本を読みふけったものだ。一度授業中に本を読んでいるのではないかと疑われたこともあったが、普段の授業態度もよかったし、実際授業中には読んでいなかったので、特に咎められることはなかった。その中で速読術を身に着け、本を幾冊も読んだ。
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ダレンシャンの冒頭は「僕はクモが好きでたまらなかった…」だったと思う。最初はやんちゃな男の子のいたずら話かと思った。しかし、小学生のダレンに重くつらい試練が次々と襲いかかり、ダレンはバンパイアとしての自分を受けいれ、成長していく様子がリアル感を伴って私に迫ってくる。
時にはダレンと炎の中にいたり、つらら地獄にいたり、宿敵スティーブへの憎しみに心を割かれたり、師匠クレプスリーを本気で慕ったりしている気持ちに陥った。その本は装飾も素晴らしくて、本好きな私の友達はみな魔力に取りつかれたように、こぞってその本を読んだ。シリーズものだったので、最新刊が出たときは、友人同士で本気でケンカする勢いで奪い合い、司書さんを困らせたものである。
高校生になっても、私は多忙を極めていたが、図書室通いはやめなかった。ダレン・シャンシリーズが完結しても、私の中にはダレンがいて、ずっと本の素晴らしさを忘れさせずにいてくれたからだと思う。専門学校で英語を専攻し、洋書を読む機会を得た。もちろんダレンシャンも読んだ。
洋書の図書室でダレンシャンの原本が見つかったとき、私は心の中で「ダレン、久しぶり」とほほ笑む自分を見つけた。好きな本のことは忘れられない。そのことがたくさんの出会いにつながっていくから。
(20代女性)
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