「黄金比の縁」の読書感想文
理系出身である主人公は、希望就職先となるエンジニアリング会社に入社が決まり、さらに花形のプロセス部へ配属され、順風満帆な社会人ライフを送っていけると意気揚々と仕事にやる気満ち溢れて臨んでいたところ、ひょんなことがきっかけで人事部へ異動させられてしまうことから物語が始まる。
突然言い渡された異動、その時の部長の心無い言動から一気に会社への恨みを持つことになるという展開がいかにもありそうで、ぞっとした。しかもエンジニアリング会社はたいてい9割型が男性なので、女性はどうしても下に見られがちであることなども伺えて、そのあたりもどこか現実の会社での実体験に基づくストーリーなのではと訝しく思えるほどに現実味を帯びている。
主人公は会社をすぐに辞める選択肢もあったにも関わらず、その道は選ばず、会社に残り続けて、会社の不利益になるよう採用の邪魔をして復讐しようと決めていく部分が面白い。主人公の人となり、本来負けず嫌いで粘り強いという長所が、こうした悪事に利用されるときの恐ろしさがまたいい。
主人公は非常に理系女子らしく、サバサバしていて論理的、頭の回転の良さや周りに流されない、人事界の常識に惑わされず突っ込むが、それを言葉ではあまり出さず、心のなかで毒舌に突っ込むあたりも読んでいて納得できるものがあり、そうだよねと思う場面ばかりである。
どういう採用の仕方をしたら効率的でかつ、確実に会社にとって打撃のある採用につながるかを考え続け、ある時見つけた顔の黄金比で採用するという法則は、なかなかない視点だと思った。しかもそれを理系らしく、数字でちゃんと確認を取っている。
果たして会社にとって不利益になるのはすぐに辞めるエリートか、いつまでも会社にいる能無しか、といって考えを巡らせて本気で会社への復讐劇を実行しているあたりがかなり面白い。
(30代女性)
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