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読書感想文「事故調(伊兼源太郎)」

読書感想文「事故調(伊兼源太郎)」

「事故調」の読書感想文

主人公の黒木は元警察官で現在は市役所の職員だ。人工海岸で陥没事故が発生し、9歳の少年が生き埋めになってしまう。その責任の所在を突き止めるために市長からの特命調査を依頼された黒木は、調査を進めるにつれ、人災であると思いを強くしていく。

役所の職員は前例がないとか想定外だったとか、責任逃れに懸命になっている。少年が亡くなり、黒木は市を擁護する立場を翻す。調査が進むにつれ、明らかになっていく隠蔽体質。それを暴き膿を出し、本当に愛される市にすべく奔走する物語である。

公務員ってこんな感じだと感じる。私もバイトとして市役所で働いているからだ。人が死ぬような事故はまだ体験したことはないが、職場で飛び交うのは「前例がないからできない」とか、「市のためにうまいことできないか」とか。

私は詳しい内容は分かりかねるが、市が隠蔽していることを解明しようだなんて、よほどの大きな事案でない限り無理だと考えている。この本では、黒木が元警察官であり、かつての同僚や世話になっている新聞記者が力になってくれたからこそ市の責任を追求できた。

自分の損得を考えず、市民のこと、市のことを愛してくれる公務員がいてくれたらどんなに心強いことか。しかし実際は欲と権力にまみれて人は動いており、何なら欲と権力だけのために動いているのである。

周りがそんな人間ならば染まっていくのが当然。黒木も染まりかけたが、よき同僚や後輩のおかげで踏みとどまることができた。これは事故調査を通して、市役所がどんなに腐った組織かを教えてくれたと感じる。

言われたことさえやればいい、権力争いに勝つにはずるいこともする、人を引きずり下ろす。そして前例主義。市役所だけに限らず、組織に属している人間なら、誰でもそうなりうる。よほどの強い意志を持っていないと汚い世界に引きずり込まれる。

諦めることは簡単だ。でも新入社員のころの熱い気持ちをずっと持ち続けろと若者に伝えたいと思う。

(40代女性)

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