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読書感想文「死のロングウォーク(リチャード・バックマン)」

読書感想文「死のロングウォーク(リチャード・バックマン)」

「死のロングウォーク」の読書感想文

近未来のアメリカでは「ロングウォーク」という過酷な競技が行われていた。14歳から16歳までの少年・少女が100人集められ、時速4マイル(時速6.4キロメートル)で歩き続ける事が求められる。これを下回ると警告を受ける。警告は3回まで。それ以上になると失格となりその場で射殺される。

競技にゴールはなく、最後の一人になるまで続けられるというデスゲームである。この昼も夜もない過酷な競技に主人公ギャラティは参加する。

現代社会への警鐘とも取れる内容になっており、とても考えさせられる。競争から脱落したものは即ち死が待っているというのはアメリカ社会の持つ競争社会・特に新自由主義社会のメタファーと感じた。

書かれたのは著者であるリチャード・バックマンが大学生の頃だというが、出版はまさに新自由主義政権が誕生した頃である。この新自由主義的な価値観は現在も根強く、本邦も共通している問題をはらんでおり悲しいかな今読んでも色あせない。

ここで描かれる参加者達の姿がさぞ必死だろう。と思いきや淡々としているのも現代社会のメタファーだからだろう。脱落者はまるで廃棄物のように運ばれ、退場しそこに感慨深さはない。ラストの主人公が競技に勝利したにも関わらず、競争を続けてしまう姿は単なる狂人か。

それとも競争原理の中で生きていかざるを得ない我々のメタファーなのか。主人公を始め、参加者達は強烈な動機がある訳ではない。死がかかっているにも関わらず、ぼんやりとした動機で参加してしまっているように思った。

言うならば目的意識を半ば喪失した競争のための競争である。過剰な競争において勝者は常に一人なのである。そして目的を見失った競争は、主人公ギャラティの最後の状態であるように思う。

我々は生きるにあたり、競争する事は大なり小なり不可避であるしそれを正当化しがちである。
この本を読んだ事で、今一度競争意識とはなんなのか自分に問いただす良い機会になったと思う。

(40代男性)

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