「虹の岬の喫茶店」の読書感想文
小さな岬にある喫茶店。そこを経営するのは、若くして夫を亡くした柏木悦子。彼女は一人で店を切り盛りしていた。彼女の仕事は、店を訪れる客のために美味しいコーヒーを入れる事。そして、客のために音楽を選曲する事。
喫茶店には様々な客が訪れる。妻を亡くし、娘との暮らしに悩む男。人生に希望が持てない元研ぎ屋など。悦子の淹れたコーヒーと優しい音楽に癒され、客達は店を出ていく。そして、常連のタニさんは悦子にほのかな想いを寄せていた。
だが、悦子の心の中には満たされない想いがあったのだ。誰もが幸福なわけではない。幸せそうに笑っている人も、その心の内まではわからないのだ。店主の悦子は、客達の孤独や辛さに寄り添い続ける。流れる曲には、悦子の想いが添えられている。
客達が満たされるのは、その想いをしっかりと受け取ったからなのだ。人生は、良い事ばかりではない。だが、悪い事ばかりでもない。そんな当たり前な事に気付かされる。大きな事件こそ起きないが、ここにはリアルな人間を感じる。自分もその喫茶店にいるような嬉しい錯覚を感じるのだ。
浩司という男。悦子の甥だが、彼が登場する事で思わずクスッと笑える。もう一度バンドをやりたいという、中年の青春が希望を与えてくれる。一度諦めたからといって、夢は終わりではない。そして、悦子が好きな虹の絵。その絵の真実がわかった時には思わず溜め息が出た。こんな喫茶店があったなら、辺鄙な場所でも迷わず行くだろう。
人生を前向きに歩めそうだ。素直にそう感じた。これまでは、辛い事があるとなかなか立ち直れなかった。道行く人達が皆幸せそうに見えたからだ。だが、この本を読んでそうではないと改めて気付かされた。
悦子は、客達の心に寄り添い続ける。一見するとお節介な行動にも思える。だがそうではない。彼女自身、心に哀しみや孤独を感じている。その事に気がついた時、彼女の言葉がとっても暖かくなる。辛い時には本を読み返して、悦子に励まされたいと思う。
(40代女性)
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