〜名作が見つかる読書感想文の掲載サイト〜

読書感想文「透明な螺旋(東野圭吾)」

読書感想文「透明な螺旋(東野圭吾)」

「透明な螺旋」の読書感想文

ストーリーは南房総沖で発見された男性の遺体を巡る捜査から始まり、警察がその遺体の身元を特定する過程が描かれていく。遺体には銃で撃たれた跡が。警察の捜査が始まると男性の恋人であり、同居人である園香が行方不明となっていることが判明する。

行方が分からなくなったことで、園香に容疑がかかるようになるのだった。ただ彼女には当日、京都旅行に行っていたという完璧なアリバイが。彼女を庇う二人の女性の存在によって、事件は複雑化していく。

本作において注目されるのは、「ガリレオシリーズ最大の秘密」が明かされるというところだ。その秘密というのは、湯川の出生の秘密。育ての親他に、実の母親が存在したというものである。これがあまりにも唐突に感じられ、過去の作品において十分な伏線が張られていなかったた。

読者としては驚きと困惑を抱いた。湯川学の家族に関する話題が急に持ち出され、彼のキャラクターに新たな側面が与えられることは評価できたが、シリーズ全体との整合性に疑問を感じる部分になってしまった。

また、本作は科学的な要素やトリックはほとんどなく、ガリレオシリーズの中ではトリックは至って普通。だが、湯川をはじめとした家族との関係、人を思う気持ちなど人間の感情にスポットを当てているのが魅力だ。湯川にも人間の心があったのかと、改めて気付かされた。

さらに事件の真犯人に関する展開も驚きだった。プロローグでの伏線がほとんどなく、突然黒幕が現れた感じである。自分が捨てたかもしれない娘を助けたいという一心で犯行に及んだというのは納得できるが、やや唐突な印象を受けた。

エピローグにおける湯川とその母親との会話も、作品のテーマに一定の深みを持たせていた。抗えない遺伝子のいたずら、親が子を思う気持ちの強さ。本作が伝えたいであろうメッセージがこの会話に盛り込まれていた。

人間味あふれる湯川の姿を見せたことで、今後の作品における湯川のさらなる成長と展開に期待できる一冊だった。

(30代女性)

Audibleで本を聴こう

Amazonのオーディオブック「Audible」なら、移動中や作業中など、いつでもどこでも読書ができます。プロのナレーターが朗読してくれるのでとっても聴ききやすく、記憶にもバッチリ残ります。月会費1,500円で、なんと12万以上の対象作品が聴き放題。まずは30日間の無料体験をしてみよう!!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA