読書感想文「革命前夜(須賀しのぶ)」

この本を読むまで、私は「革命」という言葉の本当の強さ・重さを理解していなかったように思う。ベルリンの壁の崩壊は私の中では歴史上の出来事のひとつであり、紛れもなく「過去」のものだったが、壁のあった時代の社会の窮屈さや澱んだ空気がひしひしと感じられた。

 

壁があった時代にドイツに音楽留学をした人々の物語だが、クラシック音楽から想起される華やかさや優雅さとはひと味もふた味も違った重みがあった。日々物資や食べ物をお金で買うことができ、不満を口に出したりSNSで発信することができ、それぞれの趣味を楽しめる、それを当たり前のものとして享受している私には、頭を殴られたほどの衝撃を感じる物語だった。

 

 

 

もちろん時代が違うため比較できないとは思うが、私の感じている窮屈は、この時代の窮屈とは全く違う。私は音楽漬けの学生生活を送っていたため、音楽というものは決して努力だけでは上手くいかないことはよくわかるし、才能があるもの、才能があっても上手くいかせないもの、そもそも才能がないが努力だけで補ってきたものの違いが出て、登場人物たちが苦しむのもよくわかる。

 

圧倒的才能を前にすると食らいついて昇華できる方が小数で、大半がその才能を目の当たりにして潰れてしまう世界。全くもってフェアとは言い難い世界と、同じくフェアではない東西ドイツの在り方。音楽面でも社会情勢面でも魅せられた本はほんとうに久しぶりだった。音楽を文字で表現するのはなかなか至難の技だと思うが、この本を読んでいると音楽が常に流れている。

 

重々しい場面には重厚なもの、明るい場面には祝福のメロディというように、実際にその曲を知らなくても読んでいると音がきこえてくるようで、本の良さと音楽の良さをどちらも味わえる作品だった。加えて、これまであまり興味がなかったドイツの歴史にも興味を持つきっかけにもなった。社会人になって音楽から離れていたが、また戻りたくなってしまった。

 

(20代女性)

 

 

 

 

革命前夜 (文春文庫)

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須賀 しのぶ
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