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読書感想文「さあ、地獄へ堕ちよう(菅原和也)」

「さあ、地獄へ堕ちよう」の読書感想文

第32回横溝正史ミステリ大賞を受賞とのことで、読んでみた。主人公がアルコールと処方薬に依存しているSMバーでM役としてアルバイトしているという設定自体が意外だった。そのような主人公が、知り合いの憧れのアルバイト女性の死をきっかけに、その事件の事を、自ら様ざまな場所へ行って、探ってゆくという展開がこれまで読んだことの無い独特な展開だった。
 
自ら「メンヘラ」「病んでいる」と言いながら、得体のしれないピアス、タトゥー愛好者の集まりに参加したり、強面の大男に監禁されても、自力で脱出したりと、これまで書いた人がいないであろう世界だった。周囲の様ざまな登場人物も、自分の欲の為何かをする、計画を立てるなどという陳腐なものではなかったことも意外だった。 
 
以前なら、村上龍が少しそのような世界の人たちについて書いていたが、この著者の場合はかなりどっぷりと浸かっていそうである。最初の方の主人公の自分に関する描写と、その後の展開の違いが大きく、平均的な読者であっても、独特なグロテスクな世界に引き込むために、上手い語り部を設定したな、と、読み進めると思ってしまった。
 
金原ひとみの「蛇にピアス」などだと、始めから、「これは自分と関係ない、遠い世界の世界だな」と思ってしまったが、こちらのほうは知らない間に上手く引き込まれた感じがした。文学や小説が好きな人間と、ピアスやタトゥーが好きな人間は、普段接点が無さそうだが、この著者はこれだけ書けるのだから、普段からそれなりに接点があったのだろうか?
 
文章で描くから何とか読んでいけるが、これが映像だったり、実際に目の前にあったりすれば、とても受付けられそうもない。現実にあるものを絞り込んで、普通の人が受け取れる範囲にして、表現するというのも、文章の持つ力だろう。最近は、フランスのテロについて日本人が書いた「泥海」という小説も出たが、そちらもそのような文章による絞り込みの力を活かしたものだろう。
 
(50代男性)

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