読書感想文「毎年、記憶を失う彼女の救いかた(望月拓海)」

事故のショックで毎年1年しか記憶がもたず、事故が起こり両親が他界してしまった時期が近付くと、その悲しみから事故の直前まで記憶が戻ってしまう主人公の前に、突然謎の男が声をかけてくる。「一か月デートして、僕の正体が分かったら君の勝ち」という賭けにのっかり、だんだんとその謎の男の正体を突き止めていく主人公。デートを重ねるうち、少しずつ男の正体が分かるにつれて、ますますなぜそんな人が、私と接点があったのだろう?と新しい疑問が出てくるけれども、謎に思いながらも、主人公がだんだんと彼の優しさに惹かれていくのが、読んでいて伝わり、感情移入してしまう。途中ハラハラドキドキする展開もあり、そして彼に対する謎が全て解けた時、今までのちょっとした不審な行動など、全てのピースが合わさってなるほどなあと納得し、もう一度読み返したくなる。最初読み始めた時、記憶喪失ものなのでもっと悲観的な話かな、と思っていたが、主人公は心に傷を負っているものの、基本的に前向きな性格で、あまりしつこいお涙頂戴系ではないところが良かった。

文庫本の裏表紙のストーリー解説に、「この恋の秘密に、あなたは必ず涙する。」と煽り文句が書いてあるが、確かにラスト20ページは感動するが、私はどちらかというと、すっきり晴れやかな気分になった。それは私が想定している読者層より年齢が上だからかもしれない。もう少し若ければ号泣していたかもしれないが。元々ミステリも好きなので、センチメンタルな気分より、恋愛小説でもちゃんと伏線をさりげなくあちらこちらに張っていたことと、それを最後に畳みかけるように回収してくれたことが、読んでいて爽快で楽しい部分だった。勿論、恋愛小説として、謎の男の大きな愛情に感動もしたし、どうしてそこまで献身的に、彼女を救う方法を考えるんだとも思った。男は男で大変な事情もあって、本来は人に構っていられるほどの余裕もないはずなのに、それでも彼女を助けたいという気持ちは、無条件の愛なんだなぁと感じた。

 

(30代女性)

 

 

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