自分の中で、なぜか「青春小説」に分類されていた本シリーズの最新刊、主人公がいつの間にか私より年上かつ、年長の息子がいて、その設定にまず驚いた。しかし、主人公「私」の本に対する情熱は変わらず、出番は少なかったものの円紫さんの、こちらも変わらない「適切な導き」に、ああ、私はこのシリーズが大好きだったのだ、と改めて思った。
育児をするようになってから、集中して本を読む時間や体力を作れず、しばらく読書自体から遠ざかっていたが、本書を読み始めてすぐ、本を読み、その世界に没頭する楽しさを思いだし、本書に至っては、「私」に自分を重ねて読む楽しさまでも、あっという間に思い出した。「私」は、電車に乗って移動する。電車や車窓の描写から、私もその旅に同行しているような気持ちになる。
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その土地の名物を食べるくだりでは、私まで、食べたこともないのに、ああこんなに遠くにまで来た甲斐があった、とほっこりしてしまった。本書は、シリーズの中でも、取り組む「謎」はかなりマニアックだと思う。文学部出身の姉でさえ、これはある種の教科書のようなものだ、と言っていた。
文学部とは無縁であった私にしてみれば、こんな本があったのか、から始まり、それをこんな風に疑問に思うのか、と感心し、その「謎」を解くためになんてたくさんの努力をするのだろう、なんてたくさんの人の協力を得られるのだろう、と感嘆した。謎を謎で終わらせない、それが本シリーズの「私」の持ち味であり、愛すべき点だと思う。小さな、けれど心にずっと引っかかっている疑問に、正面から取り組むのはなかなか難しい。時間的にも、現実的にも。
しかし「私」の場合は、円紫さんがいる。「謎」を共有、というより、共感してくれる人が。そんな人がいることがまず羨ましく、そして、情熱を持って謎に挑む「私」の行動力が、シリーズ初期から変わらないことがまた、羨ましい。自分は年を取ったから、と、諦めることが最近増えた。しかし、本書を読んで、年を取ることと諦めることはイコールではないのだな、と、そんなことに気付かせてくれた本書を、私はやはり大好きだ。
(40代女性)
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