「ラブコメ今昔」の読書感想文②
恋愛はいくつになっても心の潤いになると思っている。しかし既婚者である中年の私は恋する相手はずっと夫のままであり、波乱万丈の恋のかけひきのようなものは遠い昔の話となってしまった。
だからこそ私は時々恋愛小説を読むようにしている。疑似恋愛が私につかの間のときめきを与えてくれるのだ。有川浩の「ラブコメ今昔」はタイトルからしておもいっきり恋愛小説だとわかるものであり、手に取る時に少し気恥ずかしい気持ちになったほどだ。
開いてみるとタイトルが6つ並んでおり、内容がオムニバス形式になっていた。その1作目が「ラブコメ今昔」という話だった。
6作品全体を通して自衛隊員の恋愛話なのだが、「ラブコメ今昔」は今村という中年の自衛官とその奥さんとのなれそめを軸とした物語に私はすぐにひきこまれた。
堅物で仕事熱心でちょっと怒りっぽい今村という上官と、新人記者である矢部という元気な女の子のやりとりがユーモラスでクスリと笑わせられた。
イマドキの女の子といった感じの矢部が新聞のコラムに自衛官の恋愛について書きたいから今村のなれそめを聞かせてほしいと無茶なお願いをする設定に、私は最初のうち「こんな設定ある?」と少しばかりあきれたのだが、この軽快な登場人物のやりとりを読んでいくうちにだんだんと私の心の中になじんでいった。
今村が奥さんとの出会いを思い返すのと同時に、私も自分のなれそめをふりかえるようになっていた。今村の話を聞く矢部もまた、恋をしていたことがわかった。矢部が個人的に自衛官同志の恋愛と結婚について今村が意見をきくシーンが私にとってはシリアスで印象的だった。
自衛官同志が結婚して子供ができた場合、有事の際に子供をどうするのかまでしっかり考えているのかということに言及する今村に矢部は小手先の案を提示してみせる。しかしそのような案は命をかける仕事の前には通用しないことを理解し、矢部は今村に敬礼してみせた。
私はそんな矢部に心打たれた。私は矢部を元気がとりえの空気が読めないイマドキ女子だと感じていたが、真剣に恋する女の子であり、命をかけて職務をまっとうしたいと考える芯のある自衛官だということがわかったからだ。
他にも自衛官の恋愛話が続くが、私は最後に矢部のなれそめ話でしめくくられたことで満足してこの本を閉じることができた。
(40代女性)
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