読書感想文「レキシントンの幽霊(村上春樹)」

この本を読んだとき、一番最初に思ったのが、村上春樹だなあという感想だった。村上春樹『的』とでも言えばいいのか、他の作家には醸し出せない雰囲気やユーモアの含んだセリフの掛け合い、そのどれもが私の心に刺さってきた。短編集なのだが、どれも素晴らしく、悲哀を感じ、やはり村上春樹『的』要素をふんだんに盛り込んだ本だなという印象だ。

 

最初の短編『レキシントンの幽霊』はとある外国人の友人の家に留守を預かったとき、下から響いてくるオーケストラに主人公が驚くという話だ。タイトルから幽霊という事は分かっていたが、主人公の緊張感が伝わってきて私自身ドキドキだった。次に、『緑色の獣』、これは考察やネタバレを観なくては分からない程抽象的な話だった。

 

 

雰囲気は分かれど、何が言いたいかは分からない、と言った感じだ。次に、『沈黙』、これは結構著者のメッセージが反映されていて心にきた。人の言葉に容易く流される者が一番怖いのだと再認識した。『氷男』、ホラーなのか純文学なのか分からないテーマだと思った。そもそも氷男とは具体的に著者の思うなんなのだろう? と思う。

 

氷の冷たさ、歴史の凍結、幾千万年の記憶、村上春樹の中でも好きな部類に入る話だった。『トニー滝谷』、この短編集で一番私が好きな話だ。純愛ものと言ってしまえばいいが、なんともいえない読後感で、ハッピーエンドでもないしそれでも主人公は幸せに生きたんだろうな、と思う。『七番目の男』はあまり好きではなかった。

 

と言っても、村上春樹全体を言えば丁度中間あたりの好ましさだ。『めくらやなぎと眠る女』、この短編集最後の小説だ。ひじょうにきれいな文章で語られ、ストーリーも懇切丁寧に作られているので、読みやすさと言えばこの小説は数ある中でも随一だった。

 

この短編集に言えること、それはやはり村上春樹『的』な文章やセンスや雰囲気を醸し出す、美しくて儚い幻想物語なのだと思う。僕はこの本が好きだ。

 

(20代男性)

 

 

 

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