読書感想文「1984年のUWF(柳澤健)」

1980年代、新日本プロレスはアントニオ猪木の『異種格闘技戦』で世間を巻き込んで盛り上がりを見せていた。そんな中、総合格闘技者を志して一人の男がその新日本プロレスに入団する。佐山聡(さとる)後にタイガーマスクになり、空前のプロレスブームを引き起こす若者であった。

 

だが、佐山は知る。プロレスの世界が決して実力通りの世界ではなく、彼が夢見た『純粋な総合格闘技』は”そこ”は無いことを。やがて新日本プロレスとモメた佐山は、自身の理想を求めて、同じく新日本から飛び出してきた者たちが作った”プロレス”団体”に参加する。

 

そこを真の”総合格闘技”の理想郷にするために。時は経ち、北海道に一人のプロレスファンの少年がいた。『プロレスは真剣勝負だ』と信じるその少年は、大学で高専柔道を学び、格闘技者としての実力を付けると、上京して佐山の作った新しい”総合格闘技団体”に入り、格闘技者としての道に邁進する。

 

 

 

『プロレスか、格闘技か』、そして一番強いのは誰か?、一番盛り上がるモノは何か? それはまさに、熱狂(ヒート)に取りつかれるようだった。その熱に取りつかれた男たちがたどり着いた”場所”、UWF。だが、そこには様々な人間の様々な思惑が絡まり合い、変貌を遂げていく。

 

佐山聡、藤原喜明、前田日明、高田延彦、カール・ゴッチ…。そしてフロントの人間たち。いろんな人間がそれぞれの考え、想いでUWFに関わっていくファンには知れた出来事を当時者や識者の証言で再検証していく。見えてきたのは、人間関係の複雑さと、プロレスと格闘技の合間で翻弄されるレスラーたちの姿。

 

『最強』と言う単純な価値観を追いながら、やがては孤立してしまう佐山。プロレス界のタブーに敢然と触れながら、80年代の新日本プロレスブームと90年代の第二次UWFブームの実状を余すところなく書いている。特に、UWFに参加した”スーパータイガー”の佐山が、現在のMMAにも似た総合格闘技の外郭を創始するも、仲間からとの軋轢や彼を”商品”としか見ない人間により、情熱を削がれていく姿は痛々しい。

 

また、今までファンが知っていた第二次UWF解散の裏話が詳細に語られている点、さらに、日本格闘技の”黎明期”団体、”シューティング”の活動などに触れている点は珍しい。また、『北海道の少年』として出て来る初期の総合格闘技の草分け存在、中井祐樹の話などを取り上げて、古参の格闘技ファンには非常に読みごたえのある書籍。

 

ファン以外は、組織の理想と現実をまざまざと見せられる”教本”のような書籍。『UWF幻想』とは何だったのか?その答えに近いものが分かる。

 

(30代男性)

 

 

 

 

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