読書感想文「忘れ形見(若松賤子)」

この本は英語の詩をもとに創作された小説である。作者は冒頭で、小説というほどではないと謙遜していたが、しっかりと小説として楽しむことができた。明治時代に書かれたとは思えないくらい文章が現在風で、あまり読書をしない私にも読みやすい本であった。

 

最初は主人公と奥様の関係がよくわからず、主人公の初恋の人の話でもしているのだろうかと推測していたが、実は親子の関係だった時には驚いた。しかも、奥様はそれを知っていて、しかし立場上本当のことを話すこともできず、しかし、かわいい子供とできるだけ一緒にいたい、たくさん話を聞いてあげたい等、最後まで母の愛がにじみ出ていた。

 

 

本当は真実を告げ、堂々と愛したかっただろうけれどもそれもできない。一方、主人公は両親は小さい頃に亡くなったとお爺さんに言われ育ってきたため、奥様が母親だったらよかったのにという始末。しかも、能天気にも本当の母親とあなたとでは違うと奥様に言ってしまう。事実を知っている読者にとって、もっとも切なくなるポイントであった。

 

奥様が亡くなるときも、あなたの父上は素晴らしい人だった、あなたもその様な人になるのですよ、と物語の最初から最後まで母の愛にあふれる作品だった。主人公はその後、将来の夢であった船乗りになるのだが、奥様との思い出を胸に抱き、自分の人生がこれから始まるという期待に胸を膨らませている様子がありありと描かれていた。

 

子供が成長していくうえで、親の愛情は不可欠だと言われている。この主人公は小さい頃に両親が死んだと思い生きてきたが、しっかりと奥様(=母親)からの愛情を受け人生へと希望を見出し、自ら立ち向かっていこうとしている。今の日本には将来への不安が広がっている。親だけでなく、子供たちまでもが未来への希望を抱けなくなっている。

 

そのために保守的になり、新たなことにチャレンジすることを恐れるようになっている。子供たちが夢を持ち、明るい世の中になっていくことを目指すためにも、まずは親から子への愛情をしっかりと伝え、子供達には夢を叶える力があり、そのための資格がある。失敗してもそれは経験となり、自分は自分である、挑戦し失敗したことをを非難される義務はないんだと教えてあげることが、これからの日本を発展させていくカギになるのではないかと考えさせられる物語であった。

 

(20代女性)

 

 

 

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