「許せないという病」の読書感想文
本書は、「他人を許すことができない」事に罪悪感を覚えたり、それに併発された睡眠障害など、体に異変をきたしてしまった人に向けたものである。著者は精神科医の観点から、医学的に「他人を許す」事へのアプローチを分かり易く説明している。
他人を許すことができないという病、それは今職場や家族関係にとどまらず、クレーム社会やネットの炎上被害など、様々なところで見られる現象である。私個人としては、誰かを執拗に憎むということがないので、本来の著者の設定した読み手には当てはまらないのだが、そうしたクレーマー体質の人を理解する上では有効な本であると思う。
「他人を許すことのできない病」は、前半は病識のある人を例に出して考察していく。ここで言う病識とは、病の自覚のことをという。会社でのパワーハラスメントや家庭内での夫への不満、過去の恋人への憎しみなど、現在ではなく過去に起こった事への執着がいつまでも解消されずに、著者のクリニックへ訪れた人々が題材にされる。
彼女たちはやや病識があるので治療はしやすいのだが、問題は「病識の無い人々」である。本人たちは病識がないため、自分の精神状態が異常をきたしていることに気づいていない。そしてそれを奇異に感じる周囲の人々も、当人が精神を病んでいるとは分からないし、その根本にある「許せないという病」にも気づくことができない。
それが社会的に不適合であるという評価として表立つこともあれば、人には分からないところで、ネットで延々と他人の悪口を書き込むなどの形で噴出することもある。また、「許せない」の先には「許したくない病」の考察が控えている。いわゆるクレーマー体質の人の本質である。
他人に対して許すことが施しであるように感じたり、自分が特別恩赦をしているという錯覚があり、億劫に感じている人々である。そうした人々に関わった時に我々はどう対処すべきなのか。そこまで踏み込んで書かれているため、今悩みを持つ人には役立つ本だと思う。
(30代女性)
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