〜名作が見つかる読書感想文の掲載サイト〜

読書感想文「キップをなくして(池澤夏樹)」

「キップをなくして」の読書感想文①

「キップをなくしてはいけないよ」幼い頃、このセリフを耳が痛くなるほど言われ育った人は少なくないだろう。現在ではICカードやスマートフォンそのもので改札を通過できるようになっているが、数年前までは皆、券売機で切符を買って改札を通っていたのだ。この本は運悪くキップをなくしてしまった一人の少年の物語。
 
その少年は、同じようにキップをなくしてしまった子供たちと東京駅の中で暮らすのだと、突然告げられる。そこには小さな女の子、男の子、中学生くらいの女の子、男の子。様々な年代の子供たちが暮らしていた。少年は、なかなか頭の回転の速い少年だ。駅の中で暮らさなければならない現実をあっさりと理解した。
 
駅の中に暮らす子供たちを「ステーション・キッズ」と呼ぶらしい。ステーション・キッズは駅の中に暮らし、無給で仕事をするという。仕事と言っても過酷な労働ではなく、同じ年代の電車を使って通学する生徒達を特殊な能力を使い守るという仕事だ。特殊な能力とは、時間を止めたり、存在を消したりすることをいう。
 
ステーション・キッズは駅の中でなら何でもできる。キヨスクのお弁当やお菓子、食堂や理容室、お金を払わずなんでもできる。無給で衣食住を受けられるワーキングホリデーの様なものだと私は思った。駅の中で働く大人たち、駅員や清掃スタッフには彼らが見えている。だか、手助けはしない。ステーション・キッズは力を合わせて駅の中で社会勉強をし、成長していくのだ。
 
ステーション・キッズの一人に全然食事をとらない、喜怒哀楽を感じられない小さな女の子がいる。ストーリーの中で、少女は「私は死んだ子なの」と告げる。命がなくとも存在できる駅の中。少女は幼いながらにも、駅の中で生きていくのか、天に召されるのかの2択を抱えていた。
 
少女のようにすでに現世で存在のない者、そしてステーション・キッズという謎の団体。これらをまとめて組織を動かしている「駅長さん」と呼ばれる男性がいる。この謎の「駅長さん」こそ、この物語のキーパーソンである。すべてを悟っている「駅長さん」に選ばれし少年少女だからこそ他の誰にも経験できない幻を経験することができた。彼らはみな運の良い子供たちだったと思う。
 
ストーリーの中に山手線に一日乗り続ける不登校の男の子が登場するのだか、私はここで山手線に終点はないという事実を知った。そんなサボり方があるのかと山手線沿いの学校に通おうと目標をたてたのはまた別の話としよう。
 
(20代女性)

Audibleで本を聴こう

Amazonのオーディオブック「Audible」なら、移動中や作業中など、いつでもどこでも読書ができます。プロのナレーターが朗読してくれるのでとっても聴ききやすく、記憶にもバッチリ残ります。月会費1,500円で、なんと12万以上の対象作品が聴き放題。まずは30日間の無料体験をしてみよう!!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA