何も考えずにサラッと読める、というと悪口のように聞こえてしまうかもしれないが、本当にサラッと読める。女性作家の書く恋愛小説というと、どうしてもドロドロ、ジメジメした湿っぽい作品が多くなるが、この物語は恋愛なのに全然ドロドロした雰囲気がない。
甘酸っぱくて可愛くて、サラッと読めて読了感がとても良い。京都の架空の大学を舞台にした物語だが、私は京都に住んでいるので、舞台となっている大学や町並みが「あの辺のことを言っているな…」と容易に想像できた。京都でキャンパスライフを送る登場人物たちが生き生きと描かれている。
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主人公の花ちゃんが無理やり誘われた合コンで出会った理系男子、龍彦くん(たっくん)。特別イケメンなわけでも、話が面白いわけでもないのに、妙に気になる。恋の始まりって、大体そういうものだよね…自分でもよく分からないものだよね…と共感したくなる。
大学構内で偶然出会えただけでとても嬉しかった日、少し話せた日、二人でお出かけできた日、自転車の二人乗りをした日…他人から見れば他愛もない小さなことだけど、その一つ一つがとても愛おしくて、大切な出来事で、そうやって少しずつ少しずつ思い出を積み重ねていく花ちゃんが本当に可愛い。
龍彦くん(たっくん)の周りにいる個性豊かなお友達も、なかなか良い味を出して物語に花を添えている。大学のキャンパスで起こる恋愛の話というと、青春を満喫している一部の学生(ネットの言葉で言えば「リア充」)の話のようで、ともすると読む気が失せてしまいそうなものだが、この物語はそういった嫌味が全くない。
それは、登場人物の個性が好感の持てる形で描かれていること(みんなキチンと勉強もしている)、学年が4年生で卒業という明確なタイムリミットが設定されていることも関係しているかもしれない。そして何より、「リア充」に対する妬み恨みを凌駕してしまうほどの圧倒的なさわやかさが、この物語にはある。
恋の始まりの胸がときめくあの気持ちに少し触れたくなった時、幸せな気分を味わいたくなった時、暖かな木漏れ日の差し込む部屋でのんびりと読みたくなる一冊である。
(20代女性)
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