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読書感想文「植物図鑑(有川浩)」

「植物図鑑」の読書感想文①

植物図鑑に出会って、私の中の植物に対する気持ちが大きく変わった。私は農業に関係する授業がある高校の出身でもともと普通の人よりは植物に興味があったと思う。だが、この本は植物を通して恋愛、生活など様々なことを学べた。一度はまると深く追及したくなる性格なので、出てくる植物は図鑑で何度も調べ楽しんだ。
 
作中に出てくる料理は、どれも魅力的で食欲をそそられるものばかりだった。レシピがのっていたので早速作ってみた。私の家の周りは、田畑ばかりの田舎なので本に出てきたたいていの食材は手に入った。ノビルのパスタをつくって食べたが何とも言えない感動だった。小学生のころ何も知らずに楽しくてたくさん抜いていたノビルがこんなにも美味しいものだったのか、
 
もっと早く食べてみたかったと思った。野イチゴのジャムも新鮮で美味しかった。これは、レシピがのっていなかったので作中の料理シーンを頼りにつくった。野イチゴをとっているとき、作中で一番好きなシーンの樹とさやかが一緒に摘んでいるところが浮かんできてとても楽しい気持ちになれた。二人のようなほほえましい関係がうらやましいと思った。
 
こんなにも涙をこらえきれなくなる本に今まで出会ったことがなかった。樹が急にいなくなってしまう所、帰ってきた時、樹が杏奈ちゃんにヘクソカズラを見せてもらった時。不覚にも号泣してしまった。これは外では絶対に読めないと思った。私がさやかの立場だったら、急にいなくなった樹をあんなに一途に待ち続けることはできなかったと思う。
 
いつ帰ってくるかもわからない人を待つというのはよっぽど強い気持ちがなければ無理なはずだ。樹はさやかと一生共にいるためにすべてを捨てて帰ってきてくれたところに男らしさを感じた。こんな二人のように惹かれあい素直な気持ちを言い合える関係の人と私も出会ってみたい。行き倒れた樹をさやかが拾うという、まさに偶然なんかではなく必然的な運命の出会いだったのだと思った。
 
(10代女性)

「植物図鑑」の読書感想文②

私が恋愛小説を読んで泣いてしまう時は、たいてい主人公や主人公の恋人が死んでしまったりするような悲しい内容のものが多いのだが、こんなに愛を感じて幸せな気持ちになって涙を流してしまう恋愛小説は初めてだった。読み終わった後には、大好きな人に会いたくなるようなそんな物語だ。
 
主人公のさやかは、一人暮らしをしている普通の会社員だ。ある日、仕事帰りに自宅のマンションの下で、空腹のあまり行き倒れている樹を見つける。さやかは樹を自分の部屋に入れて、カップラーメンを作ってやりお風呂も入れさせてあげるのだが、初めて出会ったばかりの男を部屋に入れてお風呂まで入らせるというようなさやかの行為に、初めはかなり驚いた。
 
だが読み進めていくうちに自然と、細かいことはあまり気にしない自由で素直なさやかの性格を知っていき、行き倒れていた男を躊躇なく助ける行為にも納得がいく。そしてそのまま樹は、家事や毎日の食事作りを担当することを条件に、さやかの家の住まわせてもらうことになる。ここから二人の不思議な関係がスタートする。
 
さやかは樹と共に暮らし始めるが、樹がどこから来たのか、いつまで自分の家にいることができるのか、何も分からない。でも何も聞かない。それは、そういった事情を聞くことによって樹が家を出て行ってしまうのではないかと恐れたからだ。私はもうこの時点で、少しさやかは樹に恋をし始めているんじゃないかと感じた。
 
そして不思議なことはもう一つある。樹は植物に対して異様な知識を持っており、外に生えている野草を摘んできては、それを上手に調理して食卓に出すという素敵な技を持っていた。それはタンポポやツクシ、フキノトウやノビルなど私たちにも分かるような身近な植物もあり、読んでいてとても興味深かった。
 
春から夏にかけて、樹は外に食材となる野草を摘みに出かけるのだが、その「狩り」に途中からさやかも同行することになる。風景の描写や植物の様子がとても細かく書かれていて、頭の中でその場面を鮮明にイメージすることができ、樹やさやかと一緒に私もその「狩り」に出かけているようなとてもワクワクした気持ちになった。
 
樹がそれらの野草で作った料理も本当に美味しそうで、思わず私も真似して作ってみたいと思ってしまうほどだった。ある時、樹が始めたバイト先のスタッフの女性が、樹にハンカチをプレゼントする。そのことに嫉妬したさやかは樹とケンカをしてしまい、思わず「樹が好きだ」と話してしまう。
 
樹は「自分もさやかのことが好きだった」ということを告白し、二人は恋人同士になる。樹もさやかのことが好きだったという事は私は全く気付かなかったが、さやかのことを大切に思っていないと出来ない優しい仕草や、さやかのふとした可愛い表情の瞬間を写真に撮ったりするところなど、樹のさやかに対する愛が今までたくさんあったことを思い出し、それに気付いた瞬間、心がじんわりと温かくなった。
 
しかし突然、樹はさやかの前から姿を消してしまう。そして今まで樹がさやかに作ってあげた野草を使った料理のレシピを一冊のノートに書き残していた。さやかは散々泣きはらした後、樹が作ってくれたその料理を自分で作ってみるため、一人で再び、樹と一緒に行った野草のある場所を廻っていく。このシーンが本当に切なくて、私は涙を止めることができなかった。
 
以前来た時と、同じ場所に同じように植物は咲いている。違うのは、隣に樹がいないことだけだ。どの場所へ行っても樹とどんなふうにして一緒に野草を取ったかという思い出があり、思い出して悲しくなって会いたくてたまらないさやかの気持ちが痛いほど伝わってきた。
 
樹にはもう会えないのに、樹が教えてくれたたくさんの種類の植物は毎年同じように咲き続け、樹のことを忘れることは出来ない。何も言わずに急にいなくなるし、忘れたくても忘れさせてくれないし、本当に最低な奴だなあ。でも好きだなあ。と、完全にさやかの気持ちになって涙を流していた。だが数ヶ月後、樹はさやかのもとへ戻ってくる。
 
樹の家は有名な生け花の家で、樹はその後を継がなければならない立場にあったが、樹はそのつもりはなく父親と対立していた。そのような状態で家を出ていたが、さやかという大切な人を見つけて、中途半端な今のままの状態ではさやかと一緒にいることは出来ないと決心し、父親と何か月も話し合いをして家の後を継ぐ権利を放棄してくる。
 
そして大学教授の助手という仕事にも就き、さやかの所へ戻ってきた。樹はさやかに結婚を申し込み、二人は幸せをかみしめ夫婦になり、物語は終わる。さやかの方にばかり感情移入していた私の気持ちは、最後で樹の方へ移った。樹のとった行動はさやかを悲しませたけれど、樹も本当に悩んで取った行動だったはずであるし、何より全てそれは、さやかと二人でこれから幸せな人生を送りたいが故の行為だった。二人の思いやる愛が本当に心にじんわり響いて、温かい涙が流れる作品だった。
 
(30代女性)

「植物図鑑」の読書感想文③

ある日主人公の女性が、自分のマンションの近くでイケメンの男性を拾うという、世の独身女性からすると喉から手が出るほど羨ましい話をベースとしている。かなりメルヘンチックな話かと思いきや、実はそうでもない。主人公のさやかと拾った男性とのやり取りが、なんとも甘酸っぱく、切ないのだ。
 
イケメン(家事や料理も得意)と同棲するという夢のようなシチュエーションで、恋に落ちない女性は居ないと思うのだが、予想通りさやかはそのイケメン(イツキ)にどんどん惹かれていく。自転車を漕いで一緒に植物を探しに行ったり、一緒にご飯を食べたりといった場面はなんとも微笑ましいものがあった。
 
さやかの思いが、会話やイツキとのやり取りを通じてとても伝わってくるのだが、なかなか2人の恋は上手くいかない。もどかしい場面が続くが、その分2人の想いが通じ合った時の感動は大きかった。幸せな日々が続くかと思いきや、イツキは突如姿を消してしまう。突然消えてしまったイツキに対して、悲しみを隠しきれないさやか。
 
この展開には私自身も驚いたし、おいてけぼりにされたさやかがとても可哀想だった。イツキが居なくなった後も、イツキを想い続けるさやかの姿がまた切ない。何度もイツキのことを忘れようとするのだが、咲いている植物達がそれを阻止する。イツキと見た植物が、彼の存在を思い出させてしまうのだ。イツキが教えてくれた植物の名前、それらを使った料理。
 
さやかの気付かぬ内に、イツキの存在はとても大きなものになっていたのだ。最後はハッピーエンドで終わるのだが、このイツキがいなくなってしまう場面は、私にとって衝撃的なものであった。大切な人は、いつかいなくなるのかもしれない。一緒にいる事が当たり前になってくると、その時間が永遠に続くように思えてくる。
 
明日いなくなってしまうかもしれないのに、永遠を信じて願わなくなる。当たり前は、実は当たり前な事ではないのだと、改めて気付かされた作品であった。私には大切な人がいる。いて当たり前なのではなく、一緒に過ごせていることに、感謝して生きていこうと思う。
 
(20代女性)

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