読書感想文「たったひとつの冴えたやりかた(ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア)」

この本は3つの物語をある惑星の大学図書館の司書が,カップルの学生に研究のための文献として紹介していくという形で描かれたSF小説である。読者はその学生とともに,舞台となっている宇宙とそこに生きる種族とその歴史を垣間見ることができる。

 

SFは好きでたまに読むのだが,初めて読む作家の場合その世界観に入れるかどうかいつも賭けだなと思って購入している。特にその世界観というか設定が綿密なような小説で,それらが初めから前提のように進められるてしまうと私の場合なかなか入り込めない。

 

しかし、この本はいわば短編集なのでそういったことはなく3つの物語を読み進めるうちに,最初はなぞたった図書館司書やカップルの学生がどのような姿かたちの生命体なのかが自然にイメージが浮かぶようになっていてその構成の自然さに読後ほのかな感動を覚えた。

 

 

3つ物語はひとつひとつが印象深いが,なかでもタイトルにもなっている2編目の「たったひとつの冴えたやり方」は痛快な冒険譚と思いきやの思わぬ結末に,リスクと責任のとり方と育まれた期間などに全く寄らない真の友情というものの存在がただただ印象的である。

 

また4編目の「衝突」もスリルとスピード感があってぐいぐい引き込まれる物語である。特にこの物語はは異星人についての描写部分も多く,その生態や文化はオリジナリティーにあふれていて登場人物がそれぞれ魅力的でお気に入りのキャラクターの死(不幸ではない)には切なくなった。

 

また,どんな世界にも存在するであろう異文化交流における誤解や行き違いなども生々しく,全編中最もボリュームがあるにも関わらず一気に読み終えずにはいられない。3つの異なる地域,人物,時間点における物語を断片的に読んでいるはずなのに,読後にはその世界の宇宙図や歴史が全体性をもって自分の中に描けるようになっている。

 

特に1つ1つがすごく特別な物語というわけではないようなのに何故かいつまでも印象に残る,そして何年たっても何かの折に思い浮かびそうな気がした。

 

(30代女性)

 

 

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