読書感想文「ハンニバル(トマス・ハリス)」

このストーリーを読み、私が感じたのは、これはサスペンスというよりラブストーリーではないかということでした。物語の主人公、レクター博士は人を殺すことを何とも思わないうえに、人を食べることを好む猟奇的な男ですが、そんな彼がクラリスに恋をする様子が、文章から少しずつ伝わってきます。
 
しかし、レクター博士の恋心になど、私が1回目にこの本を読んだ時には、気づくことができませんでした。博士のプライドが高くて気難しく、拘りの強い性格と、物語そのものの殺人シーンが猟奇的過ぎて、とても恋と結びつかなかったのです。何度か読むうちに、博士がクラリスを女性として好きになっていっているように思えました。

 
 
なぜなら、博士はどんな状況にあってもクラリスを傷つけることはなく、物語の後半では彼女に無礼な態度を取った彼女の元同僚を、大変残虐なやり方で殺し、そこからは博士が彼女を守ろうとする意志が感じられます。特に元同僚の殺し方は、脳みそをえぐるというもので、その元同僚が彼女を馬鹿にしたことへの博士の怒りさえも伝わってきます。
 
そして、物語の最後にはクラリス本人も博士に惹かれるというストーリーになっていますが、博士がクラリスに惹かれているのは分かるにしても、クラリスの博士への気持ちはいまいち読み取りにくいものに感じました。しかし、今思えば、クラリスも博士が自分を守ろうとしていることを感じていたのかもしれません。
 
それに、彼女はFBI捜査官として博士をずっと追い続けているので、そのなかで段々博士への愛情が芽生えて来たのかもしれないと思いました。この分かりにくい恋愛を表現しているところが、この猟奇的なサスペンスの見所で、残虐さのなかに一筋の人間らしさや切なささえも感じられ、ストーリーのアクセントとなっていると感じました。
 
この物語に続編はありませんが、もし続きがあるとしたら、二人のその後の生活を描いたドラマのような物語になることを、この小説のファンである私は望んでいます。
 
(30代女性)
 
 
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