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読書感想文「夏の庭―The Friends(湯本香樹実)」

「夏の庭―The Friends」の読書感想文①

私はこの本を通して生きることの意味、出会いの大切さ、今現在を精一杯生きることを学ぶことができた。児童書だけど大人も学ぶことがたくさんある本だ。

小学六年生の木山、山下、河辺の三人が町外れに暮らしている一人の老人を観察し、生ける屍みたいな老人の死ぬ瞬間をこの目で見ようという物語だ。死に対する好奇心のような気持ちから始まった老人との出会いはしだいに深い交流へと姿を変え始めるのだ。

おじいさんと仲良くなってきた頃におじいさんは死んでしまうのだ。おじいさんと三人の少年達が再び全員集えることは二度とない。今までは集えることが当然のことだったのに、それが奇跡であったんだと別れる時に気付く。

別れがあれば次に新しい出会いが訪れる。新しい環境で未知の人と出会っていく。私達は長い人生の中で、たくさんの出会いとたくさんの別れを繰り返しながら生きている。

そのどれもが決して戻らない時だと知れば、その時々を大切に生きていくことが素晴らしいと実感できるのではないだろうか。出会った奇跡にありがとうという感謝の気持ちを抱きながら生きていきたい。この瞬間私は生かされている。

私の大切な人達も生かされている。いくらもっと生きていたいと思っても、たった一日でさえ自分の思うとおりにはならない。今与えられているかけがえのない命に感謝したい。

三人の少年は卒業してそれぞれの道に向かって歩んでゆく。また三人で集えるかわからないけど、あの夏おじいさんと夏の庭に植えたコスモスの花は、彼らの頭の片隅できっと色あせないまま咲き続けるだろう。

2016年秋、人との出会いを大切にしていく私の人生が始まる。自分の子供にも是非読ませたい。自分の子供にもこのような出会いがあればいいなと思う一人暮らしの高齢者が多い現代、このような素敵な触れ合いがたくさんあるといいなと強く願う。

(30代女性)

「夏の庭―The Friends」の読書感想文②

私がこの本と出会ったのは、中学2年生の夏。私の中学校には毎朝「朝の読書タイム」という習慣があり、1限目が始まる前の15分間本を読む。前日に今まで読んでいた本を読みきった私は、何気なく次の本を探していた。

そんな時見つけたのが「夏の庭―TheFriends―」だった。夏だし夏らしい本でも読むか、と非常に単純な考えを浮かべながら本を手に取る。いつもそうだった。この時の私は毎日をぼんやりと過ごしていて、ただ何も考えない日々を送っていたのだ。

しかし、この本の冒頭を読んだ時、それは変わった。今まで考え無かった「人の死」。主人公木山の友人である山下の「死んだ人を見たことがあるか」という言葉は、非常に衝撃的だった。一度も目の前で見たことがない。

人は死んだらどんな風になるんだろう、その後どこへ行くのだろう。木山と同様に私は死への興味で頭がいっぱいになった。 痩せていて「きゅうり」があだ名の木山。対照的な体型で、魚屋の息子の山下。感情的になると貧乏ゆすりが癖の、めがね少年川辺。

彼らはどこにでもいる、小学6年生の男の子だ。しかし、彼らは「死への興味」から近所の一人暮らしのおじいさんをターゲットにし、観察を始めた。私は彼らの行動に感情移入し、まるで自分も三人の仲間になったような気持ちで読んでいた。

そして私の興味は、やがて死からおじいさんへと変わりだした。夏というにもかかわらず、こたつに入り、一日中テレビを見て過ごす。食べるものはコンビニ弁当。毎日同じことの繰り返し。

いつも独り。この人は何を楽しみに生きているのだろう。本当にこのまま死んでしまうのではないだろうか。どこか焦りにも似た感情を感じながら、ひたすら読み進めた。しかし、事態は変わっていく。彼らがおじいさんに刺身を差入れたのだ。

ただ観察だけしていた時は終わり、このことをきっかけに四人の交流が始まった。子供達と交流を始めたおじいさんは、「俺はまだまだ死なないぞ」と言わんばかりに活動的になった。 おじいさんと子供達の交流を読んでいく中で、おじいさんのことをもっと知りたくなる。

そしてそれは、子供達三人についてもだ。彼らはどこにでもいる小学生だが、それぞれ複雑な家庭事情を抱えている。特に、川辺は自分自身のようだった。

私も彼と同じ母子家庭で育ち、どこか寂しさを感じながら過ごしていた。父と別れたのが幼稚園の時で、死に目にも会えず、死んでしまったというより「居なくなってしまった」という感覚だった。

そのことを考えると辛いからと、父のことは考えないように、何も考えないように生きてきた。多分この時から、死というものを考えることを無意識に避けていたのかもしれない。父が居なくなったあの日から、多くを望まず、最初から期待をせず、ただ毎日をぼんやりと過ごしていた。

それはまるで、子供達と出会う前のおじいさんに似ている。それに気づいた私は、川辺だけでなくおじいさんの気持ちにも共感することができた。終戦後、家族の元に戻らず独りで生きてきたおじいさん。彼は辛い現実から目を背けていた。死んでいくのを待っているかのように。
 
しかし、今おじいさんには、子供達という友達がいる。少しずつ心を開き、どんどん変わろうとしている。彼らは、家族より強い絆で結ばれているように見えた。最初読み始めた時には想像もできなかったおじいさんと子供達の変化は、私の無関心で冷え切った心を暖かくした。 

しかし私は思い出してしまった。この話がおじいさんの「死」がキーワードになっていることを。夏の終わりに訪れた突然の別れは、あまりにも唐突で残酷だった。眠るように死んでいたおじいさんに、涙が出た。

他の生徒の目も気にせず、教室でボロボロと泣いた。もうおじいさんには会えない。死ぬということは、悲しい。私は死んだ父のことも思い出し、感情が溢れた。しかし子供達は、おじいさんの死を悲しみだけで終わらせなかったのだ。

彼らはそれぞれの複雑な家庭事情を乗り越え、この先の未来をしっかりと歩んでいこうとする。おじいさんとの思い出や絆が彼らを変えたのだ。そんな彼らを見ていて、私も変わりたいと思った。本を読み終えた夜、私は今まで聞くことのなかった父との思い出を母に聞いた。

思い出を耳にしていく度に、目から涙が溢れたが、心は満たされていく。私も彼らのように一歩を踏み出せたような気がした。子供達の純粋で残酷な興味から始まった、ひと夏の物語。

少年達が様々な体験をしていく中で、私たち読者に素晴らしい疑似体験をさせてくれた。それはきっと、この先忘れることの無い「大切な記憶」として心に残っていくだろう。

(20代女性)

「夏の庭―The Friends」の読書感想文③

「夏の庭」は小学校6年生の少年たちと老人の夏の物語である。いつもつるんでいる木山、河辺、山下の男の子三人組が「人の死ぬ瞬間を見たい」という好奇心から町はずれに住む一人暮らしのおじいさんを観察し始める。

最初は何の接点もなかった少年たちとおじいさんだったが少年たちがおじいさんの家に通ううちに少しずつを交流が生まれ関係が深まっていく展開である。少年たちはおじいさんとの交流を通し、洗濯や包丁の使い方を教わったり戦争体験のお話などを聞かされ成長していく。

おじいさんはぶっきらぼうな態度とは裏腹に3人が家に訪れてくるのを本当は楽しみにしていて心の中ではとても喜んでいるように思えた。

3人に生活で必要な知識や戦争体験の話を教えたのは、自分が生きている間に、これから先を生きていく少年たちのために何か残せないかという想いからだと思った。

おじいさんから色々なものを貰った少年たちが、おじいさんのために何かできないかと考え行動する姿からはおじいさんを想う気持ちや心の成長を感じさせられた。

少年たちはそれぞれ家庭に問題を抱えているが、それまで自分の中の閉ざされた狭い視野で見ていた物事が、成長していったことをきっかけに自分の世界の外側から客観的に考えられるようになっているように感じた。

ラストは3人がサッカー合宿から帰ってきたときにおじいさんが布団で寝ていて、その光景を見た次の瞬間少年たちは察知する。寝ているんじゃなくて死んでいるということを。人の死ぬ瞬間が見たいという目的からおじいさんの家に通った少年たちは、おじいさんの死に泣きじゃくる。
 
とっくに目的なんて変わっていてただおじいさんと話したいから、おじいさんに会いたいから通っていたのである。いつからか少年たちにとって大切な人になっていたのだ。このお話から人の死について考えさせられた。

人の死はとても悲しくて寂しいものだけど、その人が自分に残してくれたものを大切にしながら生きていくことが大事なんだと思う。困難に直面したとき「もしおじいさんだったらどうするだろう…」と考えることで視野が広がり世界の見え方が変わる場合があるだろう。

「こんな時、おじいさんだったらどんな言葉をかけてくれるだろう」と想像することで不思議と勇気が湧いてくる。大切な人は亡くなった後も私たちの中にいて、時には励ましてくれたり、時には生きるヒントを与えてくれたりするのである。

(30代女性)

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