読書感想文「コインロッカー・ベイビーズ(村上龍)」

この作品を読んだのは、わたしが高校生の時だ。姉が学校の図書室から借りたのを読まさせてもらったのだ。当時のわたしには内容がさっぱりつかめず、何も頭に入らないまま、ただ「読んだだけ」だった。それから社会人になり、電車で通勤中に読む本を買いに本屋に入り、文庫本化していたこの本を見つけ、なんとなく手に取り、購入した。
 
それから読み始めてみると、なんと個性的な、全体的に全くきれいな感じのしない、ドロドロの人間関係、主人公たちの数奇な運命。主人公は二人いる。躍動的な群れを嫌うキクと、繊細でつかみどころのないハシという少年たち。二人はコインロッカーで生まれ、養護施設で幼少期を過ごし、小学生になる前に離島で生活する養父母に引き取られ、生活していた。成長した少年たちの歯車は途中で狂いだした。
 
ハシが東京に行くといい、置き手紙を残して居なくなってしまった。キクと養母は東京にハシを探しに行くが、手がかりもないので見つからなかった。養母の死後、離島に養父をおいて、一人ハシと「あるもの」をている探しキク。そこでモデルの美少女、アネモネと知り合い、一緒に暮らすようになる。ハシのほうも東京でバイトをしつつ、音楽プロデューサーと知り合い、気に入られて歌手になり、マネージャーで年上の女性、二ヴァと結婚をする。
 
ここまでは割と幸せだったと思う。ここから、どんどん歯車が狂ってきている。二人の人生はお互いが意図としていない方向に突き進んでいっている。もちろん、アネモネ、二ヴァも巻き込んでいく。暗くなりながらも、最後のシーンは道が開けた感じがして割と爽快だった。
 
作中で個人的に印象にあるシーンだったのは「オムライス」が出てくる場面。この物語を読んでいると、なんだか無性にオムライスが食べたくなってしまう。ほかにも食べ物の描写があるのだが、そちらも興味がそそられるので、お腹が空いてるときに読むのはちょっとつらかった気がする。
 
(40代女性)


 
 
 
こちらの小説はかなり前に書かれたものだが、書店でピックアップされているのを見て読み始めた。題名の通りコインロッカーに捨てられたハシとキクが主人公である。この本を読んでいてこんな話が現実にあればたまらないなと思ってしまったのが本音である。ところで、私はこの本を読み進めているとハシとキク以外に好きな登場人物が生まれてきた。
 
まずはアネモネである。アネモネはキクと恋人関係である。鰐を家で飼っておりまずそのエピソードに面白さを感じた。なかなか鰐を飼っている人は居ないしましてや女性で飼っているといったワイルドなギャップがステキだと思った。鰐を飼うくらいだしたしかにアネモネは好奇心旺盛である。
 
そのため行動力もある一方で刑務所に捕まったキクと面会するために仕事を始めるといった健気なところにギャップを感じた。この原作ファンには読んでいるうちにアネモネの虜になってしまうものもいるだろう。キクに真っ直ぐなところがまたアネモネの魅力のひとつであろう。次にキクが刑務所に入った時に一緒に行動する山根といった人物である。
 
暴力が原因で刑務所に入ってしまった山根であるがキクがパニックに陥ってしまった時にキクを助けてあげる場面で私は山根というキャラクターが気に入った。山根は看守の方からもよく怒られていたり問題児のような扱いを受けておるのだがキクには優しくしてくれる存在であった。そんな中身の意外な優しさが良い点でもある。
 
最後刑務所から脱獄しようとした時に山根だけ捕まってしまうところでは読んでいて悲しい気持ちになった。このようにコインロッカーベイビーズには少ししか出てこない登場人物もいるのだかその一人一人のキャラクターが濃く読んでいると新しい発見をしたりすることもある。ハシとキクは確かにコインロッカーに捨てられて世間から見れば悲しい存在でもあるがそんな中力強く生きている2人の姿に驚かされるであろう。
 
私はこの本の台詞の中で最後のハシの叫びが好きだ。力強く生きようという心情が描かれており大変印象に残るものであるだろう。
 
(20代女性)


 
 
 
物語のあらすじを読んでも、意味が分からなかった。キク、ハシ、アネモネ。これが人の名前だということもわからなかった。読んでみて、こんなにも濃厚な人生があるかと思った。生まれた直後にコインロッカーへと押し込められた少年たち。体が弱かったおかげで、発見されるのが早かったハシ。全く別の場所で同じ頃、押し込められていたキク。偶然同じ養護施設へ入れられ、出会った二人は、その後運命共同体のような形で一組の夫婦へ引き取られる。
 
ここまで一緒の人生を歩むというのは縁でしかない。九州の孤島で、幼少期を過ごした二人。石炭工場の跡地や海岸。彼らにとって初めて目にするもの。そして養父と養母との生活。これらが彼らにとって一番幸せな記憶なのではないだろうか。特に養父との記述が少ないが、養母との思い出は自分の母親との思い出を呼び起こしてくれた。子どものためを思う母親の気持ちが、養母とのシーンで感じられた。
 
だから、ハシが東京へ行き、行方が分からなくなってしまい、それを追ってキクと養母が東京へ行ったとき、母親の心配する気持ちが伝わってきた。しかし、その後、養母は亡くなってしまう。キクは亡くなった養母と一晩同じ部屋で過ごすこととなるのだが、なんとも言いようがない感情になる。キクが狂ってしまったのはいつからなのだろうか。養母が亡くなった時なのか、それとも、養護施設でハシと出会った時なのか。
 
それとも、コインロッカーへ入れられた時からなのか。序盤から激しい勢いで人生を歩んでいるように感じた。心の中にずっと残っていること、それは「コインロッカーへ残されていた」という事実なのだろう。だからこそ狂って行ってしまうのだろう。キクもハシも。しかし、もし仮に二人が出会っていなかったら、どのような人生を歩んでいたのだろうか。
 
好きな女性と仲睦まじい家庭を築いていくことが二人にはできるのだろうか。そういった人生ももしかしたら、あったのかもしれない。どこで人生の選択をし間違えたのか、この物語を読んでいると分からなくなる。破滅していったのはとても自然なことのように思える。もしかしたら、破滅とも言えないのかもしれない。これが当然の終わり方ならば。
 
(30代女性)
 
 
新装版 コインロッカー・ベイビーズ (講談社文庫)
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