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読書感想文「虹の生涯―新選組義勇伝(森村誠一)」

元御庭番の和多田主膳が「桜田門外の変」にたまたま出くわし、井伊直弼の首を水戸浪士から奪い取ったことで、彼の運命が激変。仲間3人と一緒に、隠居の身から一転して幕末の動乱に巻き込まれ活躍する姿を描いている。
 
途中から新選組と行動を共にすることとなり、新選組同志が時代に翻弄される波乱万丈の物語を同時に描いている。和多田主膳たちは老人であるが、それぞれ剣、矢、槍などの武芸に優れ、いろいろな局面で幕府や新選組を助ける。老境に達した境地で淡々と大きな仕事をこなす場面は、若い武士とは違った意味で胸のすく思いだ。
 
時代の流れを的確に読み、それに黙々と従ったのも、無欲ゆえだと痛感、自分の今後の処世術に取り入れ、実践したい。46年のサラリーマン生活を3月に終えた身にとって、彼らの老人パワー、そして花魁との恋なども大いに力づけられた。
 
新選組については、主膳たちの活躍と絡めて史実に則りながら、一部フィクションも取り入れて、新しい視点から描いているところが新鮮かつ面白い。特に芹沢鴨、近藤勇、土方歳三のそれぞれの人物評価は目から鱗である。
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土方の非情であるが、スケールの大きい視野は、近藤をはるかにしのいでいた。新選組が終末を迎える時でも、絶対に諦めず先を読み、戦略を考えていた。榎本武揚とともに函館五稜郭まで行動を共にする。私の今後の生き方の大きな指針になると感じた。
 
それに比べ、近藤勇は京都で羽振りを利かせていたころは意気揚々であったが、幕府の衰退とともに、彼も意気消沈していった。組織のリーダーとして、彼の限界がこの辺りにあったのだろう。改めて、六然の「得意澹然」「失意泰然」の言葉が思い起こされた。
 
もう一つ興味深かったのは、最後の将軍徳川慶喜に対する評価だ。一般的には慶喜は大政奉還などを通じて歴史的には高い評価を得ているが、筆者は幕臣たちの目を通して、もう少し、天皇や公家たちに強い姿勢を示すべきであった、ファイティングポーズをとるべきであったと、暗に批判してるように私には見えた。会津藩などの幕臣を見殺しにしたという厳しい意見である。
 
この見方には賛否両論あるが、やはり物事というのは通り一遍の見方ではなくて、複眼的な見方が必要だと痛感した。いずれにしても、幕末の動乱から徳川幕府の瓦解、そして明治維新という大きな歴史の転換点で、それぞれの男たちが精いっぱい戦い、生き抜いた姿は万感胸に迫るものがあった。
 
(60代男性)
 
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