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読書感想文「博士の愛した数式(小川洋子)」

「博士の愛した数式」の読書感想文①

私は最初はこの小説の映画を見た。映画を見たら小説が気になったので、小説を読む事にした。主人公の博士の交通事故による後遺症、80分しかもたない記憶や博士の数学についての説明など、映画で見た時と同じ内容のはずである。しかし、小説として活字で書かれているとまた映画とは違う印象を受けた。
 
博士と家政婦との出逢い、家政婦の子どもに対する声かけなどを読むとこの小説は恋愛小説に発展するのかなと思ってしまった。しかし『0を発見した人間は偉大だと思わないか』という博士の言葉や家政婦の子どもをルートと呼ぶ事など、まるで数学の小説かと感じた。数学が苦手な私にとっては、苦手な言葉が多くあったが、途中で読む事をやめようのは思わなかった。
 
小説に出てくるルートや階数、素数などは学生の時以来久し振りに見た言葉ばかりだった。数学の教科書でこれらの言葉を見たら絶対に嫌になるが、この小説の場合だと、面白く感じるから不思議だと思う。教科書ではつまらないと思って、覚えられないのに、好きな小説だと覚えられるものだと改めて思った。
 
記憶が80分しかもたない博士も辛い事ばかりなのだろうけど、その博士をお世話する家政婦も大変だろうなと思う。自分の家族の事を世話するだけでも大変だと、私は毎日思っている。仕事だとは理解していても、他人の家で後遺症のある人との関わりは、仕事、大変ねという一言ではすまないのだろうなと思う。
 
家政婦が家にくる度に生年月日や電話番号を質問し、それらの数字について解説する話をきく事なんて私には無理だろうなと感じた。人間には誰でも他人に邪魔されたくない時はあると思う。その時がこの博士にとっては数学の事を考える時間というのは、数学が苦手な私にとっては驚きである。
 
またその邪魔をする事で不機嫌になってしまう博士の対応のんて、益々無理だからルートの母親以外の家政婦が続かない理由がわかると思う。そして博士の記憶が義姉と出掛けた時で止まっている事で、この義姉と博士の中にある気持ちも止まったままなのかなと思った。
 
記憶が続かない博士にとっては、交通事故の時で止まったままでもいいのなとも思うが、側にいながらその博士を見守る義姉は何を思うのかと考えると少し寂しく感じた。恋愛のような数学のような、色々と考えられる小説だと思った。
 
(40代女性)

「博士の愛した数式」の読書感想文②

博士が愛した数式、この題名に惹かれた理由は、当時私が数学者を目指し、大学で必死に研究をしていたからだ。数式、博士というキーワードが私の心を強く惹き付けた。もちろん、数学の専門書ではないことは承知であった。当時狭き門を探って努力をしていた私に、数学者をモデルにして描いた小説とはどんな内容だろう、と興味を惹かれたのだ。
 
最初の設定から驚かされた。主人公は記憶が45分しか維持できず、45分ごとにリセットされる、という内容だった。当時たくさんの事を長期的に覚えていなければならない立場だった私は、なんて残酷な設定なんだろう…と胸が締め付けられるおもいだった。
 
元数学者であった主人公がどんどん記憶を失う事が原因で、人の助けが必要となり、ホームヘルパーを頼むが、その性格の特異さから何人ものホームヘルパーが数日で仕事をやめてしまう。
 
そんな中で綴られた長く続いたホームヘルパーが感じた事や、そのホームヘルパーの子供が登場することで、記憶を失っているはずの博士が以前の人間性や性格を感じさせる人生になっていく。なによりもそこに登場する子供の存在が博士に与えた影響はすごく大きいと感じさせた。
 
最初は題名だけに惹かれて買った小説だったが、切り口が面白く、読み進めるごとに面白く感じていて、少しでも時間を作って続きを読むのが本当に楽しい作品であった。後に第一回本屋大賞を受賞することは全く予測の範囲外だったが、人と人との関係が希薄になり、無関心になっている現代、人の暖かさや、人のために何かしたいと思わされるような経験を得られた貴重な作品だ。
 
各登場人物の個性もよく描かれていて、何度みても感動する。その時によって読み手の角度も変わるので、注目する登場人物を変えて読むことにより、様々な人生を自分で生きているような気持ちになる。他の性格を実体験するような感覚になるので、日頃の雑事を忘れたり、人生で人の暖かみを感じる。人間関係が嫌になった時にとても救いを得た小説である。
 
(30代女性)

「博士の愛した数式」の読書感想文③

私がこの本を読み感銘を受けた部分は、子供へ対する博士の愛情である。この本を読むキッカケは、”夏休みに本を読もうという”小中学生を対象にしたキャンペーンに応募したからである。何冊かあるリストの中から私が娘に読ませたい本を選んで応募したのだ。
 
娘は読書と数学に苦手意識がある。本をプレゼントされたことをキッカケに読書をしてほしいと考えたのだ。つまり、餌で釣ろうとしたのである。本を読むついでに、数学にも興味を持ってくれたら一石二鳥だというずるい考えもあったのだ。私自身、この本が映画化されたときから興味をもっていたのも事実である。
 
しかしそれは数学に興味があったのではなく、記憶が80分しかもたない数学者に興味があったのである。記憶が80分しかもたない人間がどのように数式を解くのか知りたかったのである。本が届き、夏休みになり、読まれないままの本は本棚に飾られていた。
 
娘に本を読むように勧めても拒否されるのが予測できたので、まず自分が内容を確認するために本を読んだのである。親が読書をする姿を見ることで、読書に興味を持ってほしかったのだ。そういう親心はあったが、書籍が届いた瞬間から読みたくてうずうずしていたのである。私は数学が苦手である。
 
この本には多くの数式が登場し、数式を理解しながら読み進めるため多くの時間を費やしたのであるが、苦手な数式が登場するにも関わらず、決して飽きることはなかったのだ。それどころか、数学の世界に魅力を感じ、博士宅の家政婦のように自ら数式の理解にチャレンジしようと考えるほど数学にのめりこんでしまったのである。
 
そうさせたのは、家政婦の息子(ルート)に博士が数学を解かせる方法が楽しかったからである。博士は、ルートが問題を解くのを決して焦らせることなく、どんな答えでも褒めるのだ。数学の知識が豊富だからできる技である。そして、よりよい方法へと導いてくれるのだ。
 
私は学生時代、解き方1つ、答え1つで試験を受けてきた。そして散々な成績にショックを受けていたのだ。しかし、この本を読んだことで、無数に広がる数字の世界に興味を持つことが出来たのだ。ルート(√)は難しいと思い込んでいたが、ルート記号はあらゆる数字を保護してくれる優しい記号だと知ることが出来たのだ。
 
そのおかげで、中学3年生の娘がルートの宿題で質問してきたときには、学生の頃のように諦めることなく、正解を求める気持ちになれたのである。娘に勉強を教える方法も博士から学ぶことが出来たのだ。さらに、博士の子供へ与える愛情も私に力をくれたのである。
 
どんな時でも子供を最優先に考え、大切にする博士の姿に同感したのである。私は過保護である。しかしながら過干渉にならないように、子供が息苦しくならないように気をつけながら子育てをしてきたのだ。子供に留守番をさせる家庭は多いが、私はなるべく娘を一人にしないように育ててきた、そして間違っているのかと自問自答していたのだ。
 
周りの母親に比べて自分が神経質すぎることを反省することもあったのだ。家政婦が、息子を留守番させて自分の夕食作りをしていると知った時のセリフが私の心を軽くしてくれたのである。
 
「子供を独りぼっちにしておくなんて、いかなる場合にも許されん。」母親になり14年、自分の子育てが正しいのか不安を感じていた心に響いたセリフである。子育てには様々な考え方があり、対立する考え方の人間はお互いを否定することもあるのだ。
 
子供が幸せに暮らせているのならば、愛情を注ぐことを我慢しなくてもいいのだ。この本を読み終えてからは、以前よりも穏やかな気持ちで過ごせるようになったのである。
 
(30代女性)

「博士の愛した数式」の読書感想文④

この作品を読んだとき、何とも言えない心の温かさに包まれた。孤独な数学者と家政婦、そして家政婦の息子とのやり取りのなかに、奇妙さとともにどことなく温かさがあったのだ。数時間しか持たない記憶のもと、家政婦が何度も根気よく同じ説明をしながら博士との心のつながりを深めていくところが読んでいて心に響くものがあった。
 
数学という学問の性質と、博士の孤独感が絶妙にマッチしており、博士が今そこで問題とにらめっこして、頭を掻きながらも挑んでいる、という姿がイメージとして目の前に浮かんでくるような、そんな描写がされており、読んでいる間は、まさに博士の「本とメモ帳だらけの部屋」に一緒にいることができたのである。
 
数学というと難しい、苦手なイメージもある人が多いが(自分もそうである)、ここで取り扱われている数学は、決して辛いものではなく、むしろ美しくも思えた。とっつきにくいと思われる専門用語も、博士の説明と、最後に放たれる、「美しいだろう?」という旨の言葉によって、まさしくキラキラと輝いて見えるのだ。
 
数式に対して、美しさ、キュートさ、聡明さなど、独特の表現をもって、少しづつ世界に引き込まれてゆくのである。博士の孤独感の描写は、思わずそばにいてやりたい、と感じるものであった。しかし、家族に対する暖かな思いやり、子供に対する慈しみ、そのどれをとっても読んでいるこちらの顔がほころぶような、そんな感覚にされた。
 
数学の世界の枠を通り越して、この世界の中は様々な数学的要素で成り立っている、ということに改めて気づかされもした。野球選手の背番号、だれかの誕生日一つをとっても、そこに意味があるように感じた。博士の数学に対する愛、人に対する愛、そんな愛情に満ち溢れた作品を読むにつれ、数学というもの、数式というものに対して、こちらまでいとおしくなってくる。
 
ある時博士がある数式を提示するのだが、読む者はきっと息をのむことだろう。普段なら敬遠しがちな数式・数学の世界に、違った見方で没入することができ、読み終えた後の心の温かさ、愛おしさに満足感を覚えた。
 
(20代男性)

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