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読書感想文「世界から猫が消えたなら(川村元気)」

「世界から猫が消えたなら」の読書感想文①

この作品は主人公は自分が生きるために悪魔と交換条件に世界からいろいろなものを消していく選択をしていく話だ。最近、映画化されてさらに話題になっている。世界から携帯電話がなくなったら…。携帯電話がないなんてこともう誰も想像もできないのではないか。私自身も携帯電話のない生活を考えられない。
 
今は電話だけでなく、様々な機能も果たしている。作中にもあったが、待ち合わせの場所、時間になっても相手が現れない。現代はそれならとメールや電話をすることが当たり前だ。では、携帯電話がないとどうするのか、待ち合わせの場所で待ち続けるのか、辺りを探すのか、だが、別の場所で相手が待っていたら、探している間に相手が現れたら、やきもきしながらどうするか考えなければならない。
 
だが、それだけ、相手のことを考えるのだろう。携帯電話ですぐに誰かと連絡がとれる現代、どれほど相手を思いやることができているのだろうか。世界から時計がなくなったら…日本人は時間に厳しい人種である。仕事の出勤時間、電車やバスのダイヤはどうなるのだろうか…だが、海外ではバスは時間通りにこないのが当たり前らしい。時間を気にせずのんびりと構える心の余裕が持てるのだろうか。
 
人間が作り出した便利なものは以外と人間を縛っている部分もあるのかもしれない。また、無駄なことをしてみることも必要ではないかと考えてしまった。世界から猫が消えたなら…主人公にとってはいることが当たり前でとても大切な存在だったことに気づかされた。
 
猫を消すことを自身の命と引き換えにやめてしまう。人によって大切なものは違うことやあって当然のものがとても大切なものであることを気づかせられる。悪魔のキャラクターの設定がとてもおもしろい。チャラくてちょっと怖い存在。フィクションの設定の中、リアルな面も感じさせられた。だからこそ、フィクションの世界の話に終わらずに現実的に「もし~が世界から消えたら…」と思わず考えてしまう作品になったのだと思う。
 
(30代女性)

「世界から猫が消えたなら」の読書感想文②

この本を読んで命についてかんがえさせられました。よく、「命の次に大切なもの」と言ったりしますがそれは、人間誰しも命が自分にとって一番大切だと思うが故にできた言葉だと思います。ですが、本当に人間にとって命より大切なものは無いのだろうかと思いました。
 
この本の主人公は、一日の命と引き換えに、自分の姿をした悪魔に大切なものを消されていきます。現実では当たり前にあるものが無くなるなんてありえません。しかし逆にこの「ありえない」設定から浮かび上がってくるのは、私たちがいかに大切なものを見落としているかということだなと思います。
 
作者は「人間は、何も失わずに、何かを得ようとする。」と言っています。これこそ人間が大切なものを見落としてしまう理由なのではないか、と思いました。こうして大切なものを失っていく中で、彼は愛猫とともに、かつての恋人、親友、疎遠になった父の思いに触れていきます。
 
余命宣告をされてまず初めに、かつて恋人であった、小さな映画館で働く女性と会います。映画を見ようと彼女と約束をした主人公。自分の命と引き換えにこの世から映画を消されるため、これが人生最後の映画。選んだフィルムは、なんとただの空白でした。
 
彼はその空白を見つめながら、自分の人生を振り返っていたのではないかと思います。画面が暗転した後、彼はこう言います。「もし自分の人生が映画なのだとしたら、エンドロールの後も見た人のなかに残る映画でありたい」と。この言葉を聞いて、とても響くものがありました。
 
私の人生を映画に例えると、小さくて地味で、製作費も安くて、全くヒットなんかしないと思います。ですが、誰かの励みになり、誰かの記憶の中で続いていく映画にしたい、とその時思いました。次の日、目覚めるとなぜか愛猫のキャベツが人間の言葉をしゃべっていました。
 
そしてキャベツと余命宣告をされてついに一週間が経とうとしたある金曜日、悪魔は笑いながら、「次は、世界から猫を消しましょう」と言います。すると、愛猫のキャベツが走って主人公をある所へ連れていきました。ここで主人公は、四年前に病気でなくなった母親が、彼に手紙を残していたことを知ります。
 
その手紙には「死ぬまでにしたい十のこと」について書かれてありました。私は「考えてみると、死ぬまでにしたいこととは、全てあなたのためにしたいことだったのです。」という部分に、胸を打たれました。このお母さんのような気持ちを、私はいつか生まれてくる子供に抱けたらいいなと思います。
 
(10代女性)

「世界から猫が消えたなら」の読書感想文③

私がこの本を読んで1番感動したのは、この世界で生きることで感じられる、自分が忘れていたことを思い出させてくれたことである。この本は、主人公の設定がほとんど書かれていないので、本当に自分が問いかけられているような気持ちになり、とても感情移入ができたのだ。
 
自分が同じ立場だったらどうするであろうか。そう思いながら読み進めた。人間いつか必ず死ぬことは分かっているし、それがいつになるか分からないと頭では分かっていた。しかし、いざ明日自分が死ぬと考えると恐怖しか頭に浮かばない。もし、私が主人公と同じ立場だったとしたら、確実に悪魔と取り引きをしているであろう。そしてこうも考えた。普段はいつ死んでもいいと思っているのに、実は心の底ではまだ死なないだろうと思っているから、死が目の前だと考えるととてつもない恐怖に怯えるのであろうと。
 
そして、目の前の着信を返すことに精一杯で本当に大切な人に連絡をとってきたか。その言葉にハッとさせられた。いつも携帯電話をいじっている間、その時間でなぜ大切な人と話をしたり、電話をしたりしていなかったのだろうと。先ほども書いたが、頭では分かっているのだ。その大切な人もいつ死んでしまうかわからないと。それなのに、私は携帯電話で何をしていたかといえば、ゲームやSNSだった。私は主人公を置き換えて考えてみた。もし、主人公の立場が旦那だったらと。
 
自分の死よりも、恐ろしくなった。いつも必ずそばにいてくれると、そう勝手に確信していたからだ。そう考えると、自分以上に悪魔と取り引きをして生きてほしいと考えてしまった。そして、もし明日旦那が死んでしまったらと思うと、気が狂いそうになり、後悔しか浮かんでこないことに気がついたのだ。
 
私は旦那の隣にいつもいる。しかし旦那と向き合って話す時間と携帯電話を見ている時間、携帯電話を見ている時間の方が長いであろう。自由は不安もともなう。という文にも深く考えさせられた。縛られることや、行う行動を決められていると、自由がほしくなる。私はそうだ。
 
何時になったらごはんを作らなければいけない、など毎日縛りの中で生きている。では、好きにしていいよと言われたらどうであろう。最初は嬉しいであろう。しかし、本当にやらなくてもいいのかという不安がつきまとうに違いない。やらなくてはいけないことがあった方が、安心していたのだ。
 
最後に主人公は世界の素晴らしさを知り死を受け入れる。私は、まだ生きていける。いつ死ぬのかは分からないが、今生きている。そこは主人公と違う。私にはまだできることがあるのだ。まずは携帯電話を置いて、旦那とたわいもない話をしようと思う。
 
(20代女性)

「世界から猫が消えたなら」の読書感想文④

川村元気という小説家の名前を知ったのも「世界から猫が消えたなら」という本に出会ったのも同時だった。本屋で、本を買う時は表紙に惹かれて購入することが多い私は、大好きな猫が表紙になっていただけで手に取ってしまった一冊だった。

つい手に取ってしまうくらい可愛い子猫の表紙だ。シビアな内容とは知らずクスっと笑いながら物語を読み進めているうちに、少しづつ胸が苦しくなる感覚に襲われる。それは、自分にとっては大切な物であっても、他人からしてみれば大した価値がないのかもしれないと思わせるからだろう。

主人公は、案外大切な物が多いタイプかもしれないが自分が同じ境遇にあったとして、自分の意思だけで勝手に世界から「何か」を消すことを選択するだろうか?とも思う。想像が膨らんでいく。実は「何か」がなくても十分足りている世界。

日本は、成長したけれどその分衰退した文化も多いなと郷愁に近い思いも抱く。一昔前は、年賀状のやり取りだけでなく手紙のやり取りも当たり前だった。送る相手を思ってレターセットを買ったり、記念切手を買って相手に喜んでもらおうとした記憶もある。

なにより相手に思いを馳せて数時間、手紙を書く時間を費やしたのだから。そういう時間は全くなくなった。なのに、今の方が時間に追われて忙しくしているという矛盾。だからと言って、今だって相手を大切に思う気持ちは変わらない。

しかし、この本に出会ったのだから大切な「人」に「何か」を伝える手段として「手紙」を書いてみようかと思わせてくれるのだ。「あなたのことが大切だ」とどのくらいの人たちに思いを打ち明けたか。大切な物を本当に大切に扱ってきたのか。読んでいる最中は、たくさんの問いを投げかけられた。

感動や学びとは全く違う、押し付けではない「大切に思う気持ち」をそっと教えてくれる、読者に寄り添って語り掛ける一冊だと感じた。一冊を読み終えた時、清々しい気持ちで「生きている今」だから「この一冊の本」を大切な人に贈ろうと思うのだった。

(50代女性)

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