「何者」の読書感想文①
就職活動に励む学生の群像劇かと思いきや、最後の最後で喉元にナイフを突きつけられる。「お前は何者だ?」そう問われているようで、とても恐ろしい気持ちになった。この小説は主人公を含む5人の大学生が就職活動に臨むのだが、その様子がなんともリアル。
自分も数年前に就職活動をしたのだが、「ああ、あるよねこういうこと」「そう、友達が先に選考に進んでるとハラハラしちゃうよね」と共感してしまう部分が非常に多かった。また、主人公たちはおそらく高学歴なのだが、学歴だけでどうにかならないところも非常に現実的だ。
面接の練習を必死でしているにもかかわらず、その手前のウェブテストで落とされてしまう、しかもそのテストを手伝ってくれる友人はいない。内定ふたつゲットしたと思ったら、そのどちらもよく聞く「大企業」ではなかった…。
大企業に内定したかと思いきや「エリア職」…。絵に描いたような成功は簡単には手に入れられない現実がひしひしと伝わってきて、とてもじゃないが就活挑戦中には読めたものじゃない。
何度となく祈られた思い出が蘇ってきて、思わずページを握る手が震えた。そして、いっそう震えたのが、最後の30ページ。登場キャラクターの中で比較的冷静で現実的な主人公、拓人の正体が暴かれるシーン。
拓人に感情移入して終盤まで読んでいただけに、最後の最後で拓人、そしてページを通り越した「私」に刃を剥いてくるあのシーンには、読みながら背筋が凍る思いだった。
「意識高い系」なんてちょっと斜に構えた目で他人を見てみたり、がむしゃらに、時には痛々しいまでに自分の活動をアピールする人を見下してみたり。そんな風に観察者ぶっていても、自分を変えることはできない。
自分を今以上の存在にするためには、痛々しくても傷を負おうとも変化するために挑戦し続けなければならない。
痛々しくも爽やかさが残るラストシーンには、ひねくれてないで前向きに未来を見ていこうぜ、と思わされた。
(20代女性)
Audibleで本を聴こう
Amazonのオーディオブック「Audible」なら、移動中や作業中など、いつでもどこでも読書ができます。プロのナレーターが朗読してくれるのでとっても聴ききやすく、記憶にもバッチリ残ります。月会費1,500円で、なんと12万以上の対象作品が聴き放題。まずは30日間の無料体験をしてみよう!!