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読書感想文「風立ちぬ(堀辰雄)」

「風立ちぬ」の読書感想文②

有名なジブリ映画タイトルの原作ということで手に取った。ライトノベルなど読みやすい文章に慣れていた身としては文体がやや重く、堅苦しい印象を受けた。現代人が読むのであれば先に映画を、とも思ったが中身としても映画は改変が多く、根本は一緒だが別物としてとらえた方が良いだろう。 中身は死に近づいていく恋人との日々をつづった日記といった形である。
 
ただ、単なる日記ではなくきちんと最後まで読ませる力があるというのは興味深かった。というのも昨今の小説のような大きな山場があるわけでなく、心躍るような出会いも、何か困難に立ち向かうような主人公の成長といったものもない。謎があるわけでもなく、危機感があるわけでもない。それでも最後まで読み切らせる力がある、という部分が面白いと思った。
 
また、読後感も、そういった分かりやすい起承転結があるわけではなく、感情も大きく揺さぶられるわけではない為、本一冊を読み切った達成感というよりも、しばし思いにふけるような心持になる。 こういった過去の文学は学生に読書感想文の課題として無理やり読ませるような傾向があるが、ことこの本に関してはなんらかの形に自然と出会い、そして無理やり感想文を書かせるようなことをせずに自然と感じたまま、どこか心に残しておいてほしい物語だと感じる。
 
感受性が高い人であれば何かしら感じるものがあるように思う。 特に気に入っている部分は、恋人の病状にうまく向き合えない主人公が創作の世界へと逃げ道を探す展開だ。大切な人がゆっくりと死に向かうという状況は、あまりにも物悲しく、それでいて叫んだり思い切り泣いたりして発散することができない。主人公は病気の当人ではないからだ。
 
その感情の発散の方法として創作を用いようとする姿が、とても人間臭く見えた。この作品の面白い所はそういった感情の揺れ幅をリアルに描いている点にもあると思う。人の死を単純に悲しいものとしてとらえるのではなく、それまでの過程を悲しいほど暖かく描いている作品だ。
 
(30代女性)

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