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読書感想文「インドネシア イスラームの覚醒(倉沢愛子)」

私は今、インドネシアで生活を送っている。あまり知られていないが、インドネシアは世界最大のイスラーム人口を誇り、2億5千万の人口の9割がイスラームだと言われている。実際、私の周りにもイスラームの人たちが大勢いるし、友人も多くはイスラームだ。
 
ここに来てから彼らのことについてわかったようでわからないことが多かった。例えば、何故断食やお祈りをするのか、女性は何故ジルバブ(頭部を覆うスカーフ)をしなければいけないのか、そもそもイスラームの教えとはどのようなものか、日本では連日イスラーム過激派によるテロが報道されているが、彼らはそのような動きをどう感じているのか。
 
疑問は尽きなかったが、(特にテロリスト関連の)疑問を言い出すことで彼らとの関係に亀裂が入ることを恐れ、また元々人懐こいインドネシアの人々の性格も相まって聞かずとも問題はなかったので聞かずじまいだった。
 
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そんな時、私はこの本を読んだ。本自体が10年近く前のものだったが、そこに書かれていた人々の姿は、日本の人たちと大小の違いはあれど、商売に精を出し、男女の仲を楽しみ、時には政治などにも利用したりされたりと、紛れもなく同じ人間としての生き方だった。この時は、イスラームと言っても何も特別なわけではないのか、と感じたくらいだった。
 
読後、短い感想をSNSにアップしたところ、思ったよりインドネシアの友人から反応があった。インドネシアの友人たちは少々日本語がわかるものの、難しい言葉は分からず特に漢字は苦手としている。おそらく彼らはこの本の「インドネシア」「イスラーム」という言葉に反応したのだろうが、私自身も反応があったことに驚いた。
 
しかし、よく考えてみれば彼らにとっても、日本人の私は異邦人であり、何を考え、何を望んで生きているのかはわからない面もあったのではないだろうか。そう考えるようになり、その後、私はインドネシアの友人と話をする際に「イスラームの本を読んだ」と話してみたが、そこから「イスラームをどう思うか」「日本ではイスラームはどうか」等と矢継ぎ早に質問された。
 
なるほど、彼らも日本人の私がイスラームをどう思っていたのかわからなかったのだろう。そして、私がイスラームについて知ろうとしているとわかると、堰を切ったように質問をしたのだろう。私は、相手を知ろうとすることがここまでの変化をもたらすものかと驚いた。
 
考えてみれば、確かに相手を嫌うときは相手のことを知らずに嫌うことも多いし、相手を知ることで相手の様々な一面を見て認識が変わる場合もまた多い。
 
日本にいるころの私も、イスラームと聞くとどうしても「1日5回の礼拝」「断食」「テロリスト」くらいのことしかわからなかったが、この本を含めたイスラームの本をいくつか読み、何より現地で生活をすることで過去の認識が如何に相手を知らないで持った、底の浅いものなのかと痛感した。
 
そして、相手を知ろうとすることは、相手との絆を作る第1歩なのだとこの経験を通して感じた。これは何もイスラームなどの異文化の人たちとの関係に限らず、この人生で関わる全ての人間関係に関わるのではないだろうか。もちろん、中には決して相容れない人がいるのも事実だろう。しかし、知ろうとする前から少ない情報・知識だけでその人を判断していては、決して良い人間関係は作れないだろう。
 
これは私たちが何かと陥りがちな人間関係の落とし穴だ。この世界には何十億の人が存在し、私の生涯で会う人数がどれほどか想像もつかないけど、「相手を知ろうとする」このことだけは決して忘れずに人と接していきたいと思う。
 
(30代男性)
 
 
 

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倉沢 愛子
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