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読書感想文「ロスジェネの逆襲(池井戸潤)」

「ロスジェネの逆襲」の読書感想文①

半沢直樹シリーズ「ロスジェネの逆襲」はドラマの続きが気になって読むことにした。寝ようにも続きが気になってなかなか眠れず、夜更かしして読むことに。ドラマでのイメージがあるので、読んでいて物語にはいりやすく、夢中になってしまうストーリー展開であった。
 
何年かぶりに小説を読んだが、ワクワクしてとても楽しく読めたと思う。4時間ほどで読み終わった作品である。時間を忘れて読むことが出来る。今回の作品は半沢直樹の出向先、東京セントラル証券が舞台となり、子会社の東京セントラル証券が親会社の東京中央銀行に仕事を取られてしまうという展開だ。疑問に思った半沢がいろいろ調べ、東京中央銀行と戦うことに…。
 
「東京スパイラル」の買収を狙う「電脳雑技集団」のアドバイザーは、東京中央銀行。「電脳雑技集団」からの買収を防止したい「東京スパイラル」。半沢率いる、東京セントラル証券がアドバイザーになる。お馴染みの激しい攻防戦が繰り広げられていくことにワクワクした。半沢の頭の回転の良さ、議論の強さが読んでいて爽快である。雑魚キャラはけちょんけちょんにされる。
 
毎回ながら東京中央銀行の銀行員は出世欲が強く、自分のことばかり考えてせこいことばかりしているが、それに対して、半沢は自分の意志を貫いている。人事に惑わせられることもない。物語のなかで、半沢は働くことの考え方について説いている。半沢の名言を紹介したい。
 
「オレにはオレのスタイルってものがある。長年の銀行員生活で大切に守ってきたやり方みたいなもんだ。人事のためにそれを変えることは、組織に屈したことになる。組織に屈した人間に、決して組織は変えられない。そういうもんじゃないか」
 
自分のスタイルを貫いていると、融通が効かない、協調性がない、と評価されることもあるかと思いう。わがままなヤツだとまわりから見られたりもするだろう。日本は、まだまだ少数派が否定されやすい社会だと感じている。徐々に良くなっている気もするが、否定されても、屈することなく自分のスタイルを貫きとおす。そんな人材が日本社会を変えていくのであろうか。著者から読者に向けての言葉のように感じた。
 
(20代男性)

「ロスジェネの逆襲」の読書感想文②

私には将来の夢がある。学生だからが故に、夢に限りない希望を持っている。しかし、バブル時代が弾けた直後の「ロスト・ジェネレーション」、略してロスジェネ世代と呼ばれた学生たちは、少し違った意見を持っていた。学生らしからぬ冷静な意見を。森山雅弘こと、「森山」の少年期を辿ると、バブル真っ盛りの時期に、周りの友人たちが豪遊している様をとても羨ましく思っていた。
 
けれど、バブルが弾けると同時に、豪遊していた友人たちがポツポツと席を空けていく。「森山」の親友である瀬名もその一人であったのだ。唐突にきた別れも、何度も経験した「森山」は安定した収入を求めて銀証券会社へ就職する。将来の夢云々を飛ばして、安定を求めた。現代の私から比べるなら、とても大人びた考えをもって冷静な仕事選びだなとは思った。
 
しかし、その就職先で待っているのは、上司から虐げられ働かせられる、責任転嫁の山であった。バブル時代に就職してきた何の資格も持たない、学歴すらも薄いような層に、手厚い補助や地位に溺れる上司たちに「森山」は理不尽さを募らせる。自分は、将来に困らないように、と勉学に励み、資格も取れるだけの事はしてきた彼にとって、就職というものは非常に困難を極めたのだ。
 
なぜなら、バブルが弾けた直後の景気の悪化は甚大なもので、いくら有能な人材がいたとしても、中小企業などに就職するのがやっとのことだった。「森山」も有能とされてきたが、小さな証券会社へ就職出来たのは数十社受けた後の事であった。果たして、将来の夢とは、単なる夢物語に過ぎないのだろうか。私は、今持つ夢に不安を感じた。現実はそうはいかない、と言われているような気がして。
 
就職難に晒され、数十社と面接を受けた「森山」の心情にあるのは、諦め。それは、自信に対するものではなく、「社会」に対する諦めだった。備えあれば憂いなし、と言う言葉も、嘘のようだ。悲観的に物事を捉えてしまっても、致し方のないことだ。誰もが、勿論、私もそう思っていた。
 
一人の上司だけは違ったのだ。銀行から出向してきて、バブルに溺れきった中から正義を貫く一人の男は、その男だけはバブル時代のぬるま湯に浸かりきった考えを一蹴し、自ら正しいと思うことを全うしていたのだ。「森山」もこの人だけは、違う、と男を信用し始め、大きな仕事を共にする。親会社である銀行と対立することになる、大きくリスクのある仕事だ。
 
諦めたはずの社会に微かな希望を持ち出したのは、紛れもなく男のお陰である。秩序など無いも同然のロスジェネ世代含め、「森山」は、自分を守れるのは自分しかいない、という固定観念を引っ付けてきた。しかし、男の存在は、希望の光ともなった。私は返却されていくテスト用紙を見つめる。彼は将来の夢こそ、安定した職、だったが、備えはあった。
 
けれど、私は、平凡な点数をとり、可もなく不可もなくな成績ばかりを表に書いた。やりたいことがあるにも関わらず。彼らはやりたいことすら見出だせないほど、将来に不安を抱えていた。どれが正しいとか、間違いだとか考えるいとまはなく、不況の波に呑まれ、やっと就けた小さな仕事場でもありがたいことだったのだ。
 
それが今、大して状況は変わっていないかもしれないが、時代が違う。考え方も違う。やりたいことを目指して脇目もふらずに突き進める環境がある。それなのに、私は将来に希望を持っているとは思えない怠惰な結果だけを残し続けている。それは、与えられた環境が故の安心感だった。
 
この整った環境で普通に、これさえやれば、何とか夢に近づける、そんな安心感を握っている。「森山」は優秀な人材でありながら、就職難に呑まれたのだ。その当時に私がいたならと思うとゾッとした。仕事にもありつけない恐怖ほど畏怖するものがあるだろうか。明日に困るのは、御免だ。「森山」は正義を貫徹する男に照らされ、私は「森山」に、殻を破られる。「お前もぬるま湯に浸かりきっているぞ」と、言いたげに。
 
がむしゃらにやることを知らない私を叱咤激励してくれるかのように、この話のエンディングの「森山」は、将来の夢を持ち、希望に満ち溢れるのだった。
 
(10代女性)

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