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読書感想文「手紙(東野圭吾)」

読書感想文「手紙(東野圭吾)」

「手紙」の読書感想文④

『犯罪』を犯すということはどういうことかか、加害者家族の未来はどうなるのか、というのがこの物語を通して教えられた。犯罪を犯せば罪の大きさに準じて罰を受ける。それは当たり前のことで、それがあるからこそ罪を犯さないという自制心にもつながる。

被害者にとっては 罪を犯した加害者は憎むべきものであることは理解できるし、その気持ちは共感できる。自分が被害者でなくても、もし身近に犯罪者がいたら嫌悪感はもちろん恐怖も感じることだろう。では加害者のその家族にはどのような感情を抱くのだろうか。

この物語は弟の学費を稼ぐため体を酷使して働き仕事のできない体になってしまった兄が、富豪の家に忍び入って居合わせた老婦人を殺してしまったことから始まります。犯罪を犯した兄のせいで弟は住む家を失い、仕事を何度も失い、親友を失います。犯罪を犯したのは兄だ。

それでも弟に次々と試練が訪れるのは、やはり弟が加害者家族だから。この一点につきる。この物語を読んだとき、まず弟が可哀そうだと思った。弟は何もしていないのに、兄に何かを頼んだわけでもないのに、どうしてこんな不幸な目に合うんだろう。

私だったら加害者本人には嫌悪感は残るが、その家族は関係ない、こんな目にあわす世間は非情だと思った。でも物語を読み進めるうちに、もし自分の隣の家に犯罪者の家族が住んでいたらどうだろう、と考えた。

犯罪者の子供は犯罪者ではない、それは頭では分かっている。しかし家族ということは犯罪を犯すような同じ環境で育っているということ。そうならば家族も同じ思考ではないのか。また、もし刑期を終えたら元犯罪者が帰ってくるのではないだろうか。

再犯率が高い犯罪もあると聞く。また犯罪を犯すのではないだろうか。今度は自分が被害者になるのではないだろうか。それは怖い。できれば離れたい。そう考えてしまう方が当たり前のような気がしてきた。

犯罪者は自分の生活から排除したい。その家族も念のため排除したい。そういった心理から弟は世間から迫害され続けることになる。弟はその生活を断ち切るため兄に手紙を書き絶縁を宣言する。

その手紙によって、兄は自分の犯した罪の大きさをさらに知ることになる。犯罪を犯すということは被害者は一人作るだけではない。被害者の家族、加害者の家族さらにはその周りの人間にも影響を犯すことなのだ。

それを感じた兄は弟の絶縁を受け入れるが、弟は被害者家族に加害者家族として会うことで兄の気持ち、被害者家族の気持ちを知る。罪を犯せば罪を償う。でも罪を犯すことで償っても償いきれない罪が新たに生まれることになる。

罪を犯すということはどういうことなのか、良く考えさせられた作品であった。

(30代女性)

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