「氷点」の読書感想文②
ルリ子が死んだ。この事件が遺したものはとても大きかったのだと感じざるを負えない。父・啓造はこの事件の日、妻の夏枝が自分の病院で働く村井と会っていたから起きた事件だとずっと思っている。
夏枝はやはり彼女なりに自分がしでかしたことの後悔があるようで、何もなかったとは言え、こっそり会って心を奪われていたという事実。そして「おかあちゃまなんて嫌い」と言われた事実。それがずっと心に残っている。
だからこそ、事件後体調を崩し、心のバランスも崩してしまったのだと思う。「女の子が欲しい」という気持ちもだからこそ出てきた気持ちなのだろう。ただ、その気持ちは全く分からない。自分が自分の不注意で子供を失ってしまったら…。
またその子と同じ性別の子をほしいと思えるのだろうか。ただ、啓造はその気持ちにも寄り添ってくれる。結局夏枝の希望をかなえてあげるというところがある点が不思議だ。まあ、犯人の子どもを育てさせるということをするのだが。
それでも、結局、彼女の希望である女の子を養子に迎えるという決意をする啓造の気持ちは私にはわかりえない。啓造は夏枝を愛しているのだろうかと読んでいて思うことがあった。ルリ子の事件があった時点で、なぜ糾弾しなかったのか。
別れてしまえば、それで終わりではなかったのかと思う。夏枝も、自分のしたことへの後悔があるなら、例えば別れるということもあっただろうに、なぜこのまま生活していくことを選んだのか。結局二人ともお互いになくてはならない存在であったということなのかもしれない。
再び夏枝が村井に惹かれるとき、やはり啓造はなんとなく気が付いていた。そういう夏枝を見て、喜んでいる部分もあるのでは?と思う。夏枝も夏枝だ。相当な魔性の女という印象がある。清楚なフリをして、男の心を手玉に取る。自分は何もしていないという風にして。
村井はまんまと引っかかってしまったのだろう。そして高木もそんな夏枝に惚れてしまったのだろう。妙な魅力が夏枝にはある。あっという間に読んでしまったが、下巻ではどういう終わり方をするのか全く想像つかない。
(30代女性)
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