読書感想文「アバター(山田悠介)」

人間の執着っていうのは恐ろしい。時には周りから見れば小さな事であっても、本人にとっては人を殺めてしまっても成し遂げたいほどの事にまで及ぶこともあるからだ。地味で不細工な女の子、阿武隈川道子、通称アブコは高校生になって初めて携帯電話を手に入れると、クラスで仕切っている女王様、阿波野から「アバQ」というソーシャルネットワーキングサービスに招待される。

 

女王様からなかば強制的登録をさせられたアブコは最初は乗り気ではなかったもののアバQのなかの自分の分身、アバターを着飾っていくことにすっかりハマってしまう。アブコは地味で不細工な女の子だけど、将来はファッションデザイナーになりたいというしっかりとした夢をもっている。

 

そのため、そのアバターを着飾っていくことが無性に楽しかったのだ。かくいう私も地味な女の子だったため、丁度高校生の時にはアブコのようにアバターを着飾っていた経験があり、とても共感した。なんだかもう一人の自分が素敵になっていく姿をみて、自分自身も素敵な女の子になったつもりで自信が湧いてきた覚えがある。

 

ある日のこと、超レアアイテムを運良くゲットしたアブコはクラスのみんなから羨望の目で見られる。アブコは次第にその興奮に陥り、父の形見の時計を質屋に処分するところで母に止められる。ここまでいくと、まるである種のドラッグにでも染まってしまったかの様に思えた。それどころか、援助交際目当ての男から大金を盗んだり、自分自身をアバターのように整形したり、果てには、人を殺めるまでに手を染めてしまった。

 

たかがゲームのアバターごときで。これは小説だからと思いつつも、現実のニュースをみるとそうでもないのではないかと私はふと思った。報道される暗いニュースをみていると「なんでその程度の事で」と思うことがよくある気がする。きっと人の価値観というものが多様化していて、その人にとってはとても価値のあるものなのかもしれない。それはそれで良い事だと思うが、自然の大切さであったり生命の命であったり、普遍的な価値観というものは大事にしたいと気づいた。

 

一方で、私自身、何かに盲目になるほど執着したことがないということにも気づいた。アブコのように、闇に手を染めてまでとは言わないが、何かに熱中しないでただ日々を過ごすのもどうなんだろう。それはもしかしたら熱意が足りなかったり、物事に冷めた目で見てしまっているからなのかもしれない。

 

(20代女性)


 

 

 

この物語は、暗い陰気ないじめらキャラの女子高生が、学校で大流行のアバターという携帯電話アプリにより、女王様のような存在になっていく話である。アバターという着せ替えアプリをやりたくて、やっと買って貰った携帯電話で、早速やり始めた主人公。

 

そのアプリは色んなアイテムをたくさん持っているこが、学校では一番の存在になれる。もともと豪華なアイテムをたくさんもっといる意地悪な女の子がいて、その子に毎日毎日虐めの標的にされ、たくさんアイテムを手に入れて、女王の座から蹴落としてやろうと、あれこれ作戦を練るが、これが難しい。お金がかかるからだ。

 

今の時代、携帯電話は普通に使っていてもお金がかかるのに、アプリに課金し始めると、どんどんエスカレートしてしまう。女子高生のお小遣いでは無理がある。この主人公も貯めていたお金が、アプリのために底をつき、やめておけばいいのに、体を売りお金を作る事を考える。結果、簡単になんの苦労もなく、お金が手に入る。

 

こうして何回も体を売りアイテムを手にいれ、女王の座に登りつめるが、この執念が恐ろしい。寝ても覚めても、1日中アプリを着飾る事、皆が持っていないレアなアイテムを手にいれる事ばかり考え続ける。人が豪華なアイテムが当たれば、その人の携帯電話を破壊し、自分が一番。

 

最初はいじいじして、いるかいないかわからなかった女の子が、どんどん性格がかわり、恐ろしい執念を持った悪魔のような存在になる。そう、まさしく悪魔だ。最終的にアイテムの為に殺人まで犯してしまうのだから。今の世の中も、さすがに殺人まで犯す人はいないだろうが、スマホのゲームで、友達同士で競いあい、アイテムをたくさん持っている人は羨ましがられたりする事もある。

 

私の回りで皆がやっているディズニーツムツムなんかもそうだ。強いキャラ、期間限定のキャラ、プレミアムキャラ。課金している人もいる。自分のお金なので、課金するのは自由だ。でも、ある程度ラインを決めておかないと、大変な事になるかもしれない。この物語を読んで、私にも中学生の息子がいるが、気をつけないとと思った。

 

楽しいアプリ、ついのめりこんでしまうアプリはたくさん出回り、内容もどんどん進化していく。賢くスマホアプリと付き合っていきたいと感じさせられた。

 

(40代女性)

 

 

 

 

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