「アバター」の読書感想文①
人間の執着っていうのは恐ろしい。時には周りから見れば小さな事であっても、本人にとっては人を殺めてしまっても成し遂げたいほどの事にまで及ぶこともあるからだ。地味で不細工な女の子、阿武隈川道子、通称アブコは高校生になって初めて携帯電話を手に入れると、クラスで仕切っている女王様、阿波野から「アバQ」というソーシャルネットワーキングサービスに招待される。
女王様からなかば強制的登録をさせられたアブコは最初は乗り気ではなかったもののアバQのなかの自分の分身、アバターを着飾っていくことにすっかりハマってしまう。アブコは地味で不細工な女の子だけど、将来はファッションデザイナーになりたいというしっかりとした夢をもっている。
そのため、そのアバターを着飾っていくことが無性に楽しかったのだ。かくいう私も地味な女の子だったため、丁度高校生の時にはアブコのようにアバターを着飾っていた経験があり、とても共感した。なんだかもう一人の自分が素敵になっていく姿をみて、自分自身も素敵な女の子になったつもりで自信が湧いてきた覚えがある。
ある日のこと、超レアアイテムを運良くゲットしたアブコはクラスのみんなから羨望の目で見られる。アブコは次第にその興奮に陥り、父の形見の時計を質屋に処分するところで母に止められる。ここまでいくと、まるである種のドラッグにでも染まってしまったかの様に思えた。それどころか、援助交際目当ての男から大金を盗んだり、自分自身をアバターのように整形したり、果てには、人を殺めるまでに手を染めてしまった。
たかがゲームのアバターごときで。これは小説だからと思いつつも、現実のニュースをみるとそうでもないのではないかと私はふと思った。報道される暗いニュースをみていると「なんでその程度の事で」と思うことがよくある気がする。きっと人の価値観というものが多様化していて、その人にとってはとても価値のあるものなのかもしれない。それはそれで良い事だと思うが、自然の大切さであったり生命の命であったり、普遍的な価値観というものは大事にしたいと気づいた。
一方で、私自身、何かに盲目になるほど執着したことがないということにも気づいた。アブコのように、闇に手を染めてまでとは言わないが、何かに熱中しないでただ日々を過ごすのもどうなんだろう。それはもしかしたら熱意が足りなかったり、物事に冷めた目で見てしまっているからなのかもしれない。
(20代女性)
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