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読書感想文「西部戦線異状なし(レマルク)」

読書感想文「西部戦線異状なし(レマルク)」

「西部戦線異状なし」の読書感想文②

第一次世界大戦が勃発した直後、ドイツの青年パウル・ボイメルは高校卒業後多くの級友と共に無邪気に志願兵となる。彼らが特段愚かだったのではない。同じ頃イギリスでも「クリスマスまでに戦争は終わる」と何百万もの若者がこれも無邪気にピクニック気分で志願兵となったのだから。

この小説の冒頭は、兵たちが食糧の支給を受けに集まってくる場面から始まる。しかし前夜の猛砲撃で部隊は半数に減っていた。そうとも知らず炊事兵は人数分の食事を用意していた。それを聞いた食いしん坊のチャアデンは2人分食料がもらえると、「これは天の賜物だ!」と喜ぶのである。

ここに戦争の暗さはあまり感じられない。しかし戦友が「半分は共同墓地か夜戦病院よ」と言う事態を「天の賜物」と喜ぶところに救いのなさを感じる。「反戦作品」として評されるこの作品だが、大部分は奇妙な明るさが流れている。暇な時はオマルを持ち寄って輪になってカルタ遊びに興じる。

軍から支給された食料を持って行ってフランスの村娘とよろしく一夜を過ごす。「兵士なんてのは、砲弾さえ降ってこなければ悪い商売ではない」との言葉。こういった呑気とも言える日常が描かれていく。 

一人また一人と戦友たちが斃れていく中で過酷な戦場の描写もあるが、それを殊更全面に出して「戦争はこんなに悲惨です、残酷です」と言う描き方はほとんど見られない。しかしそれだけに、カビが広がるように戦争のもたらすものが主人公を中心とする若者たちに浸透していくのを感じ取る。

ある時パウルは休暇をもらって帰郷するのだが、そこに待っていたのは戦場の現実に無理解な人々、懐かしくも窮乏してゆく家族、銃後でも権力を振りかざして威張り散らす軍人だった。彼は「思っていたのと全く違う」休暇を終え、戦友たちの元に戻ってくるとホッとするくだりがある。

戦友たちのいる場所がむしろ安らぎの場となってしまったと言う現実こそが戦争の救いのなさの一面であろう。前書きに「この書は訴え出なければ、告白でもないつもりだ。ただ砲弾は逃れても、なお戦争によって破壊された、ある時代を報告する試みに過ぎないだろう」とある。

直接砲弾で破壊されなくても、戦争は確実に破壊をもたらすのである。有名なこの題名も最後まで読むとその意味するところがわかる。

(50代男性)

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