読書感想文「注文の多い料理店(宮澤賢治)」

一見ポップであるこの物語だが、リアルに想像すると今のこの現代を想像していたかのようでとても恐ろしいことに気付く。それは今の情報社会のように情報に振り回されて自滅した人たちを表現しているように感じてしまうからだ。情報をもらって気が付いた時には後のまつりで戻れることがないといったことが、現代の社会においてもあり得るのではないのだろうか?料理店が情報を与える側であり、一方の紳士たちが情報を受ける側である。

 

このストーリーでは結果的には紳士たちは助けられ元の生活に戻りはするが、そんな今の社会を思わせる作品としても取れるストーリー展開がなんとも興味深く思えた。この物語の主人公である二人の紳士だが、私にはこの二人がとても傲慢な二人に見てとれた。冒頭の紳士たちの言葉づかいから見ても決して誠意のある人間とは思えないキャラクターであり、さらに言えば連れてきた犬に対しての情もない薄情なキャラクターなのだということが読み取れた。

 

また、狩猟をしているからではなく、生き物に対してとても軽薄と思える言動があり、決して現実にいれば関わりたくない種類の人物たちである。そんな二人が「注文の多い料理店」に出会うことで窮地に立たされるということである。その中でこの二人の紳士とはある意味ではとても欲深く人間らしいキャラクターである。私は正義ばかりの人間よりかはこういった自分の欲を大切にする人間は決して嫌いではないし、現実の世界には後者の方が多いだろう。

 

だからこそ、「注文の多い料理店」に見事に罠にはめられてしまい、最後にはなんとも皮肉なことに自分たちが死なせてしまったはずのあの二匹の犬たちに助けられるという結末が本当に笑える部分で私の一番お気に入りのシーンである。彼らは身だしなみを気にしたり人目を気にするキャラクターに読み取れたがラストシーンで心を痛めたことによって顔がくしゃくしゃの紙屑のようになり、いつまでもその顔でいたというのは本当に痛々しくて笑えてしまった。

 

この物語は子供に読ませてみるととても道徳的に勉強をできる部分がとても多いが、大人が読めば逆に胸を痛めたり、後ろめたく感じる人も多いのではないだろうか?自分の欲により人を傷つけたり周りを省みないことは社会に出れば決して珍しいことでもないように思える。現在の世の中では離婚率も高くなっていたり、暗いニュースもあとを絶たない。今こういった作品を読むことで自分自身も見つめなおすことが改めてできた。

 

(30代女性)


 

 

 

 

『注文の多い料理店』は、宮沢賢治の作品の中で以外と知られていない作品である。だが私は、繰り返しドアを開けていく展開が面白くて好きな作品の一つである。久しぶりに読み返してみて、短編なのにとても奥深い教訓を秘めていることに気付いて驚いてしまった。この物語には、若い紳士が2人登場する。狩りをするために山に入ったが、鉄砲撃ちの山のガイドでさえ迷ってしまう山奥まで来てしまった。それでも、どんな生き物でもいいから狩りをしたいという欲望と、意地の張り合いでなかなか帰ろうとしない。

 

お互い意地を張らずにもっと早く素直になっていれば、一緒に山に入った白熊のような2頭の犬も死なずに済んだはずである。欲張ってはいけないし、登山ではないが、結果が出なくても引き返す勇気は大切であることを改めて教えられた気がした。また、人はとても自分の都合の良いように何事でも考えてしまうものなのだと、気付かされた。2人の若い紳士は、山奥にいることをわかっていながら、立派な西洋作りのレストランを見つけた途端、まるで疑いもせずに

 

「ここはこれでなかなか開けてるんだ。入ろうじゃないか。」と、入店してしまった。しかも、店主からの様々な注文に対しても、〈余程偉い人が始終来ているんだ〉と解釈してしまう。さらに、次々と細かい注文に応えていって、やっと最後になって自分が食べられてしまう恐怖を感じるなんで、ちょっと冷静に考えたら気付きそうなものだ。しかし、人のそんなちょっと間抜けな様子を物語にしてしまう宮沢賢治の観察力は、凄いと思う。

 

しかも、タヌキか狐かわからないが、騙されてしまった2人の若い紳士を嘲笑うようなことをせずに、この物語を締めくくっているので、宮沢賢治の誠実さを感じた。子供の頃、この物語を読んだ時に悟ったことがある。それは、”他の人に期待をし過ぎると、期待外れの時にガッカリするから当てにしない”ということだ。それまでは、友達がやってくれると思っていたのに、してくれないなどど、不機嫌になり悔し泣きをすることがあった。

 

ところが、この物語と出会ってこの事を悟り、泣くことも減ってやってもらえた”lucky”とポジティブになれた。改めて読み返してみると、子供の頃に悟った自分なりの解釈も案外的外れではなかったようだ。依存心を捨てるだけで、ずいぶんと人間関係が良くなったので、吉田兼好の言葉を借りるならば、『よろずの事は頼むべからず 愚かなる人は、ふかく物を頼むゆえに怨み怒るここあり』である。

 

この短い一編の物語だけでも、様々な想いが込められている宮沢賢治の作品の素晴らしさに感動した。改めて他の作品も読み返してみれば、以前感じた宮沢賢治の想いとは異なる物が感じ取れそうで、楽しみである。

 

(40代女性)

 

 

 

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