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読書感想文「注文の多い料理店(宮沢賢治)」

読書感想文「注文の多い料理店(宮沢賢治)」

「注文の多い料理店」の読書感想文①

一見ポップであるこの物語だが、リアルに想像すると今のこの現代を想像していたかのようでとても恐ろしいことに気付く。それは今の情報社会のように情報に振り回されて自滅した人たちを表現しているように感じてしまうからだ。情報をもらって気が付いた時には後のまつりで戻れることがないといったことが、現代の社会においてもあり得るのではないのだろうか?料理店が情報を与える側であり、一方の紳士たちが情報を受ける側である。
 
このストーリーでは結果的には紳士たちは助けられ元の生活に戻りはするが、そんな今の社会を思わせる作品としても取れるストーリー展開がなんとも興味深く思えた。この物語の主人公である二人の紳士だが、私にはこの二人がとても傲慢な二人に見てとれた。冒頭の紳士たちの言葉づかいから見ても決して誠意のある人間とは思えないキャラクターであり、さらに言えば連れてきた犬に対しての情もない薄情なキャラクターなのだということが読み取れた。
 
また、狩猟をしているからではなく、生き物に対してとても軽薄と思える言動があり、決して現実にいれば関わりたくない種類の人物たちである。そんな二人が「注文の多い料理店」に出会うことで窮地に立たされるということである。その中でこの二人の紳士とはある意味ではとても欲深く人間らしいキャラクターである。私は正義ばかりの人間よりかはこういった自分の欲を大切にする人間は決して嫌いではないし、現実の世界には後者の方が多いだろう。
 
だからこそ、「注文の多い料理店」に見事に罠にはめられてしまい、最後にはなんとも皮肉なことに自分たちが死なせてしまったはずのあの二匹の犬たちに助けられるという結末が本当に笑える部分で私の一番お気に入りのシーンである。彼らは身だしなみを気にしたり人目を気にするキャラクターに読み取れたがラストシーンで心を痛めたことによって顔がくしゃくしゃの紙屑のようになり、いつまでもその顔でいたというのは本当に痛々しくて笑えてしまった。
 
この物語は子供に読ませてみるととても道徳的に勉強をできる部分がとても多いが、大人が読めば逆に胸を痛めたり、後ろめたく感じる人も多いのではないだろうか?自分の欲により人を傷つけたり周りを省みないことは社会に出れば決して珍しいことでもないように思える。現在の世の中では離婚率も高くなっていたり、暗いニュースもあとを絶たない。今こういった作品を読むことで自分自身も見つめなおすことが改めてできた。
 
(30代女性)

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